Blog

『Nextremer向井永浩が語る』対話エンジンをビジネスとして普及していくことが我々の役割

『みんなで考える人工知能の未来』では、人工知能の研究に専門的に携わる方だけではなく、広くビジネスや経済、教育などの分野で活躍しておられる識者の方々に、人工知能に関するご意見をお聞きしていきます。

人工知能技術の発展には、専門の研究者による研究活動だけでなく、社会全体の理解が必要です。研究者だけではなく、ビジネスや経済、文化の面で活躍しておられる方は、人工知能をどう見ているのか、幅広い視点でご意見を伺うことで、人工知能研究に必要な環境づくりのヒントを得たいと思います。

今回は、自然言語処理技術を搭載した対話エンジンなどの開発に取り組む株式会社Nextremeの向井永浩社長と、若手エンジニアの古川氏、壹岐氏を迎え、全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表の山川宏も交え、同社のビジョン、エンジニアとしての思いなどをお伺いしました。

強いプログラマーの集団をめざしています

― 向井さんは、大手国内 メーカーにSEとして入社後、シンガポール資本のITベンチャーに転職され、2012年にNextremerを設立されました。なぜ、人工知能で起業したのですか。

向井:私はSEだったのですが、とにかく人工知能等最先端の研究がしたかったのです。ベンチャーにいながら研究するのは、なかなか難しいですから。今、人工知能の分野では、優れたプログラマーの方が登場してきています。そんなプログラマーの方々に活躍の場を与えたいと思いました。今は東京に19人、高知に16人、インドに約50人います。1年で人員は2倍以上になりました。

― Nextremerは、対話エンジンの研究開発・販売に加え、大手企業からの人工知能に関する研究の受託、あるいは共同研究のお仕事が多いようですが、Nextremerとしての強みは何でしょうか。

向井:やはり、実際のプログラミングに強いことですね。強いプログラマーの集団をめざしています。
そして、オープンなネットワークで、協働しながら仕事を進めていくことが得意なことです。大手のエンジニアには優秀な人は多いのですが、外のコミュニティとあまり接触がありません。しかし、ここ最近オープンイノベーション型で共同研究をやることが多くなってきました。そこで、当社の強みが発揮されます。

今、人工知能の分野では、優れたプログラマーの方が登場してきています。そんなプログラマーの方々に活躍の場を与えたいと思いました。

大手企業とベンチャーで、人材がもっと流動化すべき

― 壹岐さんや古川さんがNextremerで人工知能開発の仕事に携わることになったきっかけは何ですか。

壹岐:私は、中学生のときに「アルジャーノンに花束を」を読んで、人工知能に興味を持ちました。その後大学の博士課程で、ナノ量子デバイスを研究していました。量子コンピュータで人間を越える知能をつくりたいと思っていたのです。ただ、シンギュラリティの話なども出てきて、自分で直接コードを書いて、知能をつくることをやってみたいと思うようになりました。
そんなとき、有名なブロガーのブログでNextremerが取り上げられているのを見て、おもしろそうだなと思ったのがきっかけです。

古川:私は大手電気メーカーを退職して、1年ぐらい自営業をやっていました。電気メーカー時代に産業用ロボットに携わっていたのですが、機械学習に興味を持って、自分なりに勉強し、ロボットを知能化したいと思っていました。
全脳アーキテクチャ勉強会のことを知り、参加したいと思ったのですが、定員いっぱいで参加できませんでした。ただ、ニコ生でライブで全脳アーキテクチャ勉強会を見ていたら、「これからここで懇親会をやります」というアナウンスがあり、それを見て、直接懇親会に押し掛けたのです(笑)。そこで、Nextremerのインターンの方に出会ったのがきっかけです。

山川:そういう風に、人材がつながることが全脳アーキテクチャのいいところですね。

向井:人材がつながるということで言えば、私は、大手企業とベンチャーで人材がもっと流動的になるといいと思います。ただ共同研究するだけでなく、ベンチャーの中に入っていく。ベンチャーは誰もが経験すべきだと私は思っています。特に大手企業の方は、外との交流が少ないので、出向などでベンチャーに入っていくのは、いい経験になると思います。
実は、当社もそのような企業留学のような形で大手企業の人材を受け入れることを考えています。

実は、当社もそのような企業留学のような形で大手企業の人材を受け入れることを考えています。

まずは、人工知能が好きかどうか。これが大事ですね

― 今はNextremerに応募して来られる方も多いのでしょうね。どのような採用基準で人材を採用されるのですか。

向井:まずは、人工知能が好きかどうか。これが大事ですね。

古川:人工知能に興味を持っている人は、なんらかの成果物を持っていることが多いです。何かプログラムを創ってみましたとか、論文を書いてみましたとか。そういう成果物を見せていただくのが、一番わかりやすいですね。

― 壹岐さんや、古川さんは、好きな人工知能の仕事に従事しているわけですが、エンジニアとしては、自分の興味ある分野だけに絞って仕事をする、というわけにはいかない部分があると思います。仕事をしていく際に、どこまで自分の興味ある分野にこだわりますか。

古川:研究者としては、自分が研究したい特定の分野がありますが、仕事となると、それだけでなく、ある程度対象が広範囲になります。でも、自分の興味ある分野とドンピシャでなくても、好きになれたり、自分のキャリアにもなるので、大筋で外れていなければいいと思います。

壹岐:人工知能やニューラルネットワークは、いろいろなデータが使えるので、むしろ新しい用途を見つけられるという意味では、いろんな分野に関わることの方が、メリットがあると思います。

― 今の仕事は、割と自由度が高いのですか

古川:かなり自由度が高いですね。受託業務なので、きちんとした成果を出すことは必要ですが、成果を出すまでのプロセスは個人の裁量にまかされています。
また、どれだけ案件が入っているかにもよりますが、自分の好きなテーマの仕事をすることも可能です。

人工知能に興味を持っている人は、なんらかの成果物を持っていることが多いです。そういう成果物を見せていただくのが、一番わかりやすいですね。

オープンイノベーションの研究で成果を出すことが、我々の強み

― Nextremerは、大手企業との共同研究のお仕事が多いということですが、仕事を選ぶ基準は、どのようなことですか。

向井:やはり、技術的におもしろいかどうかですね。そちらが優先ですね。大手企業からの受託の場合、どこまでの領域をどのような品質で請け負うのか、業務の最適化という要素は重要です。
ただ、SI的な仕事の進め方は、正直あまり好きではありません。それよりも、複数のステークホルダーと、オープンイノベーションでチャレンジングなプロジェクトをやることに惹かれます。オープンイノベーションの研究で成果を出すことを、我々の強みにしていきたいと思っています。

― 全脳アーキテクチャ・イニシアティブの創設賛助会員になったことで良かったことはどういうことでしょうか

向井:もともとオープンイノベーションの思想を持っており、人材や企業、団体がオープンに交流できるプラットフォーム的なところが必要だと思っていました。全脳アーキテクチャ・イニシアティブはまさにそのような存在で、創設賛助会員になることで、ネットワーク、チャネルが広がりました。
人材採用にも結びついていますし、知名度も少し上がりました。

古川:私も、さまざまなエンジニアとのコミュニティが広がっていますので、実務に直接結びつくかどうかに関わらず、そこが、おもしろいところだと思います。

やはり、技術的におもしろいかどうかですね。そちらが優先ですね。

きちんとマーケットに受け入れられないといけないと思っています

― Nextremerの今後のビジョンを教えてください。

向井:人工知能周辺は動きがとても早いです。直近では、対話エンジンをどんどん普及させたいと思います。現在いろんなところで実証実験をやっていますが、きちんとマーケットに受け入れられないといけないと思っています。そうしないと、ブームに終わり、先輩たちの苦労が報われません。
― やはり、ビジネスとしての成果を生むことが大事だということですね。

向井:一般の人たちから見ると、「人工知能の技術の進歩がめざましいと言っても、自分の生活の何が変わったのか?」という思いがあると思います。
やはり、一日も早く、実用化されるビジネスを立ち上げる、小さくてもいいので、ビジネス化していくことが必要で、それが我々の役割だと思っています。そうすると、エンジニアも資金も集まってきますし。

山川:ワトソンは一つのブランドを作ったことに価値がありますね。”Nextremer Inside”みたいなブランドになるといいですね。

向井:足元をしっかりと固めて、ビジネスを創っていくことと、遠くを見ていくことの両方が大事です。

― 遠くの目標としては何があるでしょうか。

向井;やはり、ナイトライダーでしょうか(笑)。

山川:全脳アーキテクチャ・イニシアティブは、汎用人工知能の開発をめざしていますが、汎用人工知能が登場すると、世の中はどう変わると思いますか。

向井:パーマンのコピーロボットのような、自分の分身を作るビジネスができるといいかも知れないですね。煩わしいことから解放されるのはいいと思います。人間の仕事はムダなことが多いですからね。

壹岐:汎用人工知能が、人と人をつなぐ役割をしてくれるとか。汎用人工知能が、勝手にSNSやいろんな世界を歩きまわって、自分と合いそうな人をマッチングしてくれて、つながりを増やしていくとか。

山川:リクルーティングもいいですね。汎用人工知能によって、自分の世界が広がるというのはいいですね。

―皆さん、今日はどうもありがとうございました。

やはり、ナイトライダーでしょうか(笑)

※本インタビュー記事に掲載の内容は、2016年12月20日時点のものです。


向井 永浩氏 プロフィール

株式会社Nextremer 代表取締役CEO 
岐阜県中津川市生まれ。2000年、金沢大学卒業後、大手国内メーカーにSEとして入社後、シンガポール資本のITベンチャーに転職し、海外開発案件に従事。2012年10月、株式会社Nextremerを設立。Nextremerは、世界的にし烈な開発競争が繰り広げられる人工知能テクノロジー、中でも言語認識技術/画像認識技術を取り入れた対話システムの開発をしているベンチャー企業。また人工知能の分野で大企業とのオープンイノベーションも積極的に推進し、企業の枠を超えたネットワークを活用することで、共同研究/実証実験を行っている。

古川朋裕氏 株式会社Nextremer エンジニア

壹岐太一氏 株式会社Nextremer エンジニア


山川宏 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 代表 兼 ドワンゴ人工知能研究所 所長


構成・インタビュアー 吉岡英幸

株式会社ナレッジサイン代表取締役全脳アーキテクチャ・イニシアティブ広報委員
IT業界を中心にコミュニケーションスキル教育や組織変革のファシリテーションなどを手がける。2016年1月より全脳アーキテクチャ・イニシアティブの運営スタッフにボランティアとして参画。

Leave a Comment

Name*

Email* (never published)

Website

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください