脳参照アーキテクチャ駆動開発のニューロコンピューティング研究会でのデータ公開(2022年3月3日)

来る、3月3日に、当法人(WBAI)が推進している脳参照アーキテクチャ(BRA)駆動開発に関わる3つの発表をニューロコンピューティング研究会(NC)にてオンラインにて行いあわせて、公開するBRAデータを追加します。奮ってご参加ください。

なお、脳の計算論的な理解を促進するためには、背景となる神経科学的知見を標準的な形式で整備が有用であると考えられます。そこで今回の発表においては、予稿資料と対応した標準的なBRAデータの公開を進めています。それらを通じて、様々な神経回路モデルがBRA形式で記述され、データ投稿がなされる将来像についてNC研究会のご協力を得て検討したいと考えております。

NC研究会の開催概要

  • 研究会会期: 2022年3月2日~4日
    • (BRA駆動開発の発表は3月3日の午後です)
  • 研究会開催プログラム
  • 形式:オンライン
  • MEとバイオサイバネティックス研究会(MBE)と共済

参加費

BRA駆動開発に関連する発表(2022年3月3日(木))

13:00-14:00  招待講演海馬体に整合的な確率的生成モデルの構築
谷口彰 (立命館大学 情報理工学部)

概要: 脳の解剖学的構造や計算機能との整合性が高いモデルを構築する標準化された方法論として、脳参照アーキテクチャ駆動開発がある。本講演では、海馬体と整合性のある確率的生成モデルを構築した経緯とその方法について説明する。海馬体のナビゲーション機能に着目し、解剖学的知見などを整理した上で、従来の工学的なSLAM (Simultaneous Localization and Mapping)をベースにしつつ外側嗅内皮質(LEC)の機能を新たに組み込んだ確率的生成モデルについて紹介する。

関連論文: Hippocampal formation-inspired probabilistic generative model 

BRAデータ(暫定版):HF.bra

14:40-15:05  音声言語の二重分節解析を担う脳参照アーキテクチャの設計
○室茉央子・谷口彰(立命館大)・山川宏(WBAI/東大/理研)・谷口忠大(立命館大)

概要:ヒトの音声言語は単語が連なって文になり,単語は音素,もしくは音節を繋ぐことで構成される.この階層性を有する分節構造は二重分節構造である.このとき,二重分節構造を解析する機能を二重分節解析と呼ぶ.したがって,ヒトの脳内には二重分節構造を解析する機能が備わっていると考えられる.しかし一方で,二重分節解析を用いた既存の音声言語獲得手法では,脳の回路に参考にして設計されていない.そこで,本研究では,多くの神経科学の知見からみて脳内で実現しうる,二重分節解析を達成する確率的生成モデルの仮説を提案した.以下に手順を示す.まず,音声言語処理に関わる解剖学的構造を調査および整理した.次に,二重分節解析を実現する脳領域を特定し,二重分節解析を達成しかつ対象の脳領域の解剖学的構造に整合するコンポーネント図である確率的生成モデルに変換した.

BRAデータ(暫定版):DAA.bra

15:05-15:30 前障のI型/II型錐体細胞の連携による想像力統御の機構仮説
○布川絢子(WBAI)・山川宏(WBAI/東大)

概要: 想像という能力は,現実世界から独立した形で,世界に関して蓄積された知識を動的に統合する機構によって実現されるだろう.最近,前帯状皮質(anterior cingulate cortex: ACC)の制御のもと,前障(claustrum: CLA)が,新皮質の様々な領域への投射を通じて,そこでの神経活動の統合を制御するモデルが提案された.想像の機能を新皮質上で適切に発揮させるには,切り離される領域と,統合される領域は密接に連携されるべきであろう.切り離しの機構も,同様にCLAを介したACCによって支配するのが合理的である.CLAから新皮質の様々な領域に投射している興奮性錐体細胞は,I型とII型の2種類の細胞集団がある.そこで本発表では,新皮質上で想像力機能を支えるCLAの内部機構を,Structure-constrained Interface Decomposition (SCID)法の手順に従って構築した.結果として,一過性に活動するI型の細胞集団が情報統合のために領域間での同期を起動する機能(Clock機能)を,持続的に活動するII型の細胞集団が切り離し機能(Block機能)を担うとする,CLA内部における想像の機構を提案した.

BRAデータ(暫定版):Claustrum.bra

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