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第5回 WBAレクチャー[オンライン]全脳計算モデルの実現に向けた認知モデルの役割

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開催趣旨


近年、脳全体の機能を表現し、人間レベルの能力を持つ人工知能の実現に貢献することを目指し、全脳計算モデル(WBCM)の開発に注力している。WBCMには、神経科学的モデルだけでなく、認知モデル、特に一貫性を保つための認知アーキテクチャの構築も含まれる。認知モデルは、WBCMをAIエージェントに実装する際の解釈可能性を高め、思考プロセスへの洞察を提供する。人間の認知に似たこのアプローチは、ユーザーに心理的な安心感を与える可能性がある。認知モデルとWBCMの関係に関する議論は、強力なAIシステムが開発されるにつれて重要となってくるAIの整合性に関する議論と関連している。本ワークショップでは、正確で現実的、かつ倫理的に整合した人工的な一般知能を保証するための認知モデルの役割を強調しながら、方法論について議論することを目的とする。

関連情報
Towards Realizing Whole-Brain Computational Models Guided by Cognitive Models (WBCM-CogM)


 

WBAレクチャー開催詳細


日 時:2024年3月28日(木)(18:00~21:00)
会 場:オンライン Zoom Meeting
参加者:160名
主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
協 賛:学術変革領域研究「行動変容を創発する脳ダイナミクスの解読と操作が拓く多元生物学」

講演スケジュール

時間 内容 講演者
17:55 開場
18:03 開会の挨拶(資料) 山川宏(WBAI)
18:10 趣旨説明 森田 純哉(静岡大学)
18:20 講演1(資料 森田 純哉(静岡大学)
18:50 講演2(資料) 田和辻 可昌(東京大学、WBAI)
19:20 休憩
19:35 講演3(資料 谷口 彰(立命館大学)
20:05 パネル・ディスカッション モデレーター:市瀬 龍太郎(東京工業大学)
20:50 クロージング 実行委員長
20:43 挨拶タイム
17:00 オンライン懇親会 Meta Lifeを予定

 

講演1:認知アーキテクチャと生成AIが織りなす人と機械の共通基盤


演者:森田 純哉(静岡大学)

概要:認知モデルとは人間の認知プロセスを記述し、説明する理論である。計算機上に搭載された認知モデルは、人間の認知プロセスのシミュレータとして機能する。認知アーキテクチャは、複数の認知モデルを統合する構造である。認知モデルおよび認知アーキテクチャの歴史は古く、ダートマス会議以降着実に進展をしてきた。しかし、深層学習の進展が見出した生成AIが浸透する現代において、これらは過去の遺物どころか忘れ去られた感もある。このような時代認識にもとづき、本演者は、知性の理解に基づく認知アーキテクチャを利用することは、今後、持続可能な人と機械の協調を築くために不可欠であると主張する。本講演では、生成AI時代における認知モデルおよび認知アーキテクチャの役割を提示する研究事例を示すことで、この主張を補強する。す。

 

講演2:信頼されるエージェント構築のための脳型認知モデル


演者:田和辻 可昌(東京大学、WBAI)

概要:近年、大規模言語モデル(Large Lanugage Model:LLM)が注目を浴びている。LLMの性能は一見すると表現豊かな、対人インタラクションと遜色ない対話の実現、ひいては人間と信頼関係を気付くことが可能なシステムの基盤ができたようにも錯覚する。しかし実際には、このようなLLM を信頼して利用するためには検討すべき観点が多い。中でも、解釈可能性(Interpretability)はエージェントとの信頼関係を構築するうえでの重要な要素として考えている。本講演では、著者らの考える情感豊かなエージェントの設計を例に挙げながら、AIとの信頼構築における解釈可能性の有り様について述べる。

 

講演3:全脳確率的生成モデルによる統合認知モデルとロボティクス応用


演者:谷口 彰(立命館大学)

概要: 人の認知機能は、脳の全体的な働きと身体性による制約、環境との相互作用によって実現される。多様な実世界における認知モデルの実装と実証のためには、身体を持つロボットの活用が重要となるだろう。本講演では、人工知能学会誌の特集「生成AI 時代における認知のモデリング」において執筆した記事「脳科学とロボティクスを結ぶ統合認知モデルの実践と展望」の内容をベースに紹介する。主に、脳に学び、ロボットに実装可能な統合認知モデルとして全脳確率的生成モデル(Whole Brain Probabilistic Generative Model:WB-PGM)のアプローチについて概説する。また、WB-PGM実現に向けた個々の研究事例として、海馬体のナビゲーション機能や聴覚・言語野の二重分節化機能に着目したPGMを紹介する。その後、現在の課題と実現への道筋について考察する。
関連情報:A whole brain probabilistic generative model: Toward realizing cognitive architectures for developmental robots – ScienceDirect

 

パネル・ディスカッション


モデレーター:市瀬 龍太郎(東京工業大学)

登壇者:森田 純哉(静岡大学)、田和辻可昌(東京大学、WBAI)、谷口 彰(立命館大学)、山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)

 

 

運営スタッフ


プログラム委員長 :森田純哉 (静岡大学)
実行委員長:森岡大成
司会:田和辻 可昌(東京大学)
Zoomホスト:片山立
Zoom共同ホスト:生島高裕、実行委員数名
広報/WBAI事務局:荒川 直哉
Connpass作成/運営:西村 由弥子