「私とWBAI」電気通信大学大学院情報システム学研究科 栗原 聡

今のAIブームに思うこ

第3次AIブーム元年を米国でのM&Aが加速し始めた2013年する,すでに4年が経過している.今のころブームの減速は見られず,AIベンチャーに加え,大企業もAI研究開発に本格参入し始めている.AI関連書籍もどんどん出版されている.筆者も現在数冊の執筆を抱えている状況である.なぜ,AIはこうも注目されるのか?

AI研究に20年以上携わっている筆者しては今回のブームにず違和感を感じているだが,最近その理由が自分なりに分かってきたように感じる.ブームをもたらしたのは間違いなく深層学習法である.ブーム以前現在において,深層学習以外にAI技術で大きな変化はない.深層学習法がそれまでのAI技術より大きな潜在能力を持っているこは明らかであるが,機械学習分野の一つに過ぎない.しかし,世間においては,「深層学習=人の知能」いう解釈なり,それが「AIと職業」や「AIの驚異」いった議論を巻き起こすに至っている.見方よっては悪質なデマである.もちろん,見識のある研究者らはこのデマを訂正すべく情報発信しているものの,残念ながら今のころ効果は見られない.現実のAIと世間が思い描くAIとでは何が異なるのであろうか?
現在のAIは「弱いAI」なのに,世間は「強いAI」を思い描いているからなのか?
そもそも弱いAIと強いAIという言い回しは分かりにくい.用途限定AIと汎用AIも同様である.いくつのタスクを扱うこができれば汎用性がある言えるのか?

「汎用AI=万能AI」も論外であろう.恐らくは「道具しての受動型のAI」「自律型・能動型のAI」いう区別が適切なの思う.前者が現在のAIであり,後者が世間が思い描くAIである.そして,大雑把に言ってしまう自律型AIを作る研究,現在の道具してのAIを作る研究は異なる分野なのである.自律システムに関する研究分野も歴史があり,多くの研究がなされている.これから先,自律型AI研究が盛んになる思うが,その時の主役は現在の道具型AI研究者だけでは役不足であり,自律システム系研究者の参入が必須であり,加速するであろう.また,ボトムアップ型計算パラダイムや創発メカニズムいった研究分野の研究者の参入も必要なるであろう.その意味では,WBAIにはそのすべての人材がそろっており,WBAIがこれからの自律型AI研究開発の台風の目になるこは自明である.筆者もWBAIの一員して引き続きWBAIを盛り上げていきたい思う.