言語機能が脳内で局在化されていることは脳科学の黎明期から分かっていました。ブローカが発話に関与する脳内領域が左半球前頭葉弁蓋部に存在することを発表したのは19世紀中庸です。カハールが細胞染色によって脳が神経細胞からできていることを突き止める以前の話です。このように言語は脳の機能局在説を支持する強い根拠であり、全脳アーキテクチャ仮説を支持する証拠を提供していると言えます。一方で、機能的脳画像研究は単純な課題遂行時にも多くの脳領域が関与することを示してきました。前回全脳アーキテクチャ勉強会での西本先生の講演では脳の三次元全体の血流量の変化から、我々の心の動きを予測が可能なことが示されています。
脳の機能を考える上で、言語を題材にすることは、動物実験では得られない知見を得ることができ、知的情報処理の複雑さを解明するたために必要なことであると考えられます。今回は京都医科大学の近藤先生に脳内神経線維連絡と失語症と筑波大学宇野先生に発達性読み書き障害に関する講演をお願いしました。言葉とその病理から見た脳の構造とその変容によって言語機能がどのように変化するのかを考える勉強会になります。脳の領野では単純な機能局在が成立しないことはもはや常識ですが、それではどのような視点で脳にアプローチすれば良いのか、考える糸口と材料を得る勉強会になるでしょう。
勉強会開催詳細
- 日 時:2017年2月11日(土)19:30-21:30(19:00 開場)
- 場 所:株式会社リクルートテクノロジーズ アカデミーホール
東京都千代田区丸の内 1-9-2 グラントウキョウサウスタワー 41F
(株式会社リクルートテクノロジーズ様のご厚意による会場ご提供) - 定 員:170名
- 参加費:無料
- 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- 協 賛:株式会社 リクルートテクノロジーズ
- 後 援:株式会社 ドワンゴ
講演の模様
19:30-19:35 会場の案内および注意事項の説明
19:35-19:40 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表 山川宏より開会の挨拶
19:40-19:50 「失語症と発達性ディスレクシア」プログラム委員長 浅川伸一(東京女子大学)
19:50-20:35 「脳内神経繊維連絡と失語症」近藤正樹氏(京都府立医科大学)
失語症は、内言語の障害による症候群である。近年、脳画像解析の進歩に伴い、言語に関わる神経経路の理解が進んでいる。本講演では、MRIによる脳画像解析法の一手段である fiber tracking (tractography) による失語症の検討をご紹介し、併せて言語関連経路について報告をいくつかご説明することにより、失語症の理解に関する最近の流れを概観する。
20:35-20:40 休憩
20:40-20:45 WBAI 創設賛助会員 株式会社 Nextremer より壹岐太一様プレゼンテーション
20:45-21:30 「発達性ディスレクシア – 生物学的原因から対応まで」宇野彰氏(筑波大学)
障害種の中でもっとも出現頻度の高く、トムクルーズやスピルバーグ監督がそうであることで知られている発達性ディスレクシア(developmental dyslexia)について、用語の使い方、定義、推定される生物学的原因、大脳構造の異常部位、大脳機能低下部位、背景となる認知障害(音韻(認識)、自動化、視知覚や視覚記憶などを含む視覚認知など)、文字言語体系の違いによる関与する認知能力の種類や貢献度の違い、時間に余裕があれば科学的根拠に基づいた効果的な訓練法などについて紹介する。
21:30-21:35 プログラム委員長 浅川伸一よりクロージングリマーク
22:00-23:30 懇親会
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- ものづくり技術小景
第17回全脳アーキテクチャ勉強会