「私とWBAI」竹中工務店技術研究所 上林厚志

竹中工務店技術研究所の上林です。私の主な研究テーマは鉄筋コンクリートの構造解析ですが、過去には橋梁補修に関するエキスパートシステムの開発やニューロシステムの応用、最適化システムの開発などの人工知能に関連する研究にも携わってきました。

第3次人工知能ブームの到来とともに、深層学習による画像認識の進歩や囲碁のAlphaGoの出現を目の当たりにし、建築会社においても新たな可能性を追求することを考えました。そこで、画像認識を用いた安全確認システムの開発を企画しました。ただし、建設現場は日々変化するため、固定カメラでは十分な視野を確保できませんでした。そのため、ロボットにカメラを装備し、現場を巡回することを検討しました。2016年頃、私はヒューマノイドロボットの研究者と協力し、仮設足場の沈み込みなども考慮した二足歩行プログラムの開発に取り組みましたが、その複雑さと困難さを痛感し、ロボットの動作も人工知能による学習に置き換える可能性を探るようになりました。

多機能なロボットを操作するための人工知能を探していたところ、汎用人工知能研究会(人工知能学会のSIG-AGI)に出会いました。また、目を持つロボットというアプローチも私に合っていると感じ、松尾先生の講演やNHKなどのテレビ特集、AI関連番組の影響もあり、WBAIのシンポジウムや勉強会に積極的に参加するようになりました。

SIG-AGIでは、定期的に海外の文献を紹介し合う輪読会が行われており、WBAI代表の山川先生やWBAI事務局の荒川さんなど、輪読会主催者の方々との親交を深める機会もありました。WBAIとの関係も一層深まっていきました。WBAIでは、ハッカソンが開催され、脳を参考にしたシステムの開発を競い合ったりしています。私自身も興味はありましたが、プログラムの作成やデバッグは60歳を超える私にとってはかなりのストレスとなるため、WBAI副代表の高橋先生と話し合った結果、2017年からWBAIの賛助会員となりました。

また、2020年からは2年間、WBAIの監事として責務を果たしました。WBAIの運営会にもオブザーバーとして参加し、全脳アーキテクチャを用いた人工知能開発を間近で目にすると同時に、汎用人工知能に関する情報や研究の動向について学ぶ機会も得ました。

私自身は汎用人工知能の開発を行うことはできませんが、その生まれる様子を間近で見続けられる現在の環境に非常に満足しています。ChatGPTの登場により、汎用人工知能の実現が現実味を帯びてきたと感じます(実際、この原稿の添削もChatGPTにお願いしました)。また、WBAIを用いた人工知能の開発もChatGPTを活用して大きく進展し、その実現がより近づいていると感じています。

現在まで、全脳アーキテクチャの研究を進めることは将来的に精神医学や行動変容生物学の研究にも貢献することになると考えてきました。同様に今後は現在の人工知能が汎用人工知能になるために何が必要なのか、どういう仕組みが必要なのかを示唆できるのではと考えています。今しばらくはWBAIとともに汎用人工知能の誕生を期待に胸を膨らませながら見守りたいと思います。