文書の過去の版を表示しています。


脳のリバースエンジニアリング

??? 全脳アーキテクチャの解明というのは,脳がリバースエンジニアリングによって解明された後,それをモジュールとして構成して行われるものですか? それとも脳の解明とは別のベクトルで解明されようとしているのでしょうか? <wrap lo>(Facebookグループより・2015-09-30)</wrap>

!!! 山川さんと私とでは研究の力点の置き方が違いますが、方向性は大筋では同じだと思っています。

我々のアプローチは、脳の仕組みを模倣して、脳のような汎用人工知能を作ろう、というものです。

ただし、現状では脳の仕組みには、わかっているところとわかっていないところがあります。 現状わかっていることだけを模倣しても、汎用人工知能は到底作れません。

ではどうすればいいか。 2つの方法があります。

  1. 1つは、汎用人工知能実現に必要不可欠だが未解明な脳の仕組みの解明に取り組むという方法。
  2. もう1つは、未解明部分は脳にこだわらずに、とりあえず現状で実現可能な技術で代用する、という方法です。

実際には2つの方法のどちらか1つだけを常に取るのではなく、 両方を組み合わせたり、同時並行的に進めたりすることになるでしょう。

代用技術でも問題なく機能する場合もあれば、本質的に何かが欠けていて、まともに動かない場合もあるでしょう。 代用技術の方が生体の脳より高い性能がでる場合もあるでしょう。 ともかく、いろいろやってみるしかありません。 (一杉・2015-10-01)

!!! 我々の,WBAアプローチとして,こちらのページ( http://wba-initiative.org/wba/ )にありますように「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用人工知能を創る(工学)」というミッション・ステートメントところまではメンバ全体で合意がとれています(このステートメントはNPO法人WBAIでも継承されています). 一方で,より詳細については,一杉さんのおっしゃるように少しずつ研究者毎の考え方や力点の置き方の違いが有りますが,それは研究という営みにおいては自然なことかと思っています.

研究の広がりの一側面として,

  1. 適宜脳に学びながら必要な機械学習モジュールを作っていく流れと,
  2. それらのモジュールを組合せる認知アーキテクチャとして構築すること

の両面があります.この点は初回のWBA勉強会(http://www.sig-agi.org/wba/1)内の私の資料においては,

  1. 脳から要素を学ぶというTgNCの考え方と,
  2. 狭い意味で統合する意味でのWBAとの対比

として示されていますし,2014年のWBAプロジェクト内の議論でも二つの流れが示されていました.

最近設立されたNPO法人WBAIは公益性を持つ組織であることから,WBAアプローチを踏襲しつつ,エンジニアを中心としたコミュニティにおいて分散的かつオープンに開発をおこなうことを目指しています. 結果として1)の規模が大きくなると思いますが,どこかで統合する部分2)をおこなわないといけないので,それはWBAIというNPOを法人が主導しようとしています.

しかしならWBAアプローチそのものは,必ずしもコミュニティによる開発を志向することを限定していません. (山川・2015-10-02)

  • 脳のリバースエンジニアリング.1443869617.txt.gz
  • 最終更新: 2015/10/03 19:53
  • by admin