深層学習がはじめてその威力を示し始めた2012年から数年の間,その優位性はパターン認識に留まるようにみえました.しかし2016年現在,深層学習周辺の機械学習技術の研究対象は、時系列,注意,記憶,推論,マルチモダル等を含むものに拡大し,さらには認識と行動を繋いだ認知アーキテクチャにおいてEnd-to-End学習を行う能力も持ち始めています.こうして専門家の想像すら超えて進歩し続けている理由は,やはりAIの本質的問題が深層学習により大きく切り崩されたからと思わざるをえないでしょう.
人間並みの知能を持つAIの実現に向けて,残された主要課題は何なのでしょうか.恐らく,センサ情報にグラウンディングした真の言語理解や,獲得した複数の知識を組合せて柔軟な問題解決を行う汎用性の能力でしょう.しかしこれらについても,深層学習を発展させることで一定の成果が出始めているように見えます.さらには,AIに対する投資が増大しつつ,新しいアルゴリズムが次々とコモディティ化されることが,人類全体での共同開発を促進しているようです.こうした状況から,残された課題が比較的早期に突き崩される可能性すらあるでしょう.
一方で私達NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)でも,その周辺の研究として,学習環境シミュレータを用いたハッカソン,オープンプラットフォーム検討の進展,原型となるWBA,コネクトーム上で認知アーキテクチャの活動をモニタするツール,情動モデルの検討,Master Algorithm Framework構想の検討などに進展がありました.
そこで今回,全脳アーキテクチャの活動が第4期に入ったことを宣言し,「加速する人工知能,加速する世界」をテーマに,来る5月18日(水) 午後に,初めてのシンポジウムを開催いたします.ここでは全脳アーキテクチャの主要メンバにより,最近のAIの進展と,WBA研究の進展.さらに今後のWBAIの戦略についてのパネル討論などを行うことで,更に大きなムーブメントへと発展する足がかりとしたいと思います.
【全脳アーキテクチャーの発展】
第0期: 2013年夏~2013年11月 一杉,松尾,山川で議論
初回WBA勉強会
第1期: 2013年12月~2014年8月 勉強会の拡大期
若手の会結成
第2期: 2014年9月~2015年8月 体制構築期
NPO法人WBAI創設
第3期: 2015年9月~2016年3月 萌芽的開発期
学習環境シミュレーション/WBAの原型モデル/コネクトームの活用
第4期: 2016年4月~ これからの加速期
シンポジウム開催詳細
- 日 時:2016年5月18日(火) 13:30~17:20 (13:00開場)
- 場 所:パナソニック株式会社パナソニックセンター東京1階ホール 東京都江東区有明3丁目5番1号http://www.panasonic.com/jp/corporate/center/tokyo/access.html (株式会社パナソニック様のご厚意による会場ご提供)
- 定 員:370名(定員に達し次第締め切らせて頂きます)
- 参加費:無料
- 申込方法:本イベントに参加登録のうえ,当日会場受付にてお名前・ご所属等の記入をお願い致します。
- 主 催:NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- 協 賛:パナソニック株式会社
- 後 援:産業技術総合研究所AIセンター、国立情報学研究所、QBiC 生命システム研究センター 理化学研究所、株式会社ドワンゴ
- 同日、第14回全脳アーキテクチャ勉強会も開催しています。よろしければご参加下さい。