概要
創造性は、新しく・質が高く・適切なアイデアや物事を生み出す能力であり、科学的発見に代表される高度なレベルから日々の工夫といった日常のレベルまで様々なレベルで存在する。創造性はまた、ヒトの知性を特徴づける能力でもある。近年の脳機能イメージング研究によると、脳におけるデフォルトモードネットワーク (default mode network) と執行機能ネットワーク (executive control network) の二種類のネットワークが創造性に関与していることが示唆されている。しかし、脳機能イメージングの結果だけからでは、どのような情報処理によって創造性が実現されているのかは分からない。そこで、三輪先生と清水先生に認知科学の分野での創造性に関する研究を紹介していただく。これらをベースにして、創造性を備えた汎用人工知能を実現するために必要なアイデアを得ることを期待する。
開催詳細
- 日 時:2020年01月31日(金) 18:00~21:00
- 会 場:パナソニックラボラトリー東京 東京都中央区銀座8丁目21番1号 汐留浜離宮ビル 6F
- 定 員:100名
- 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- 協 賛:パナソニック株式会社
講演スケジュール
時間 | 内容 | 講演者 |
---|---|---|
17:30 | 開場 | |
18:00 | 開会の挨拶 | 森川幸治(パナソニック) |
18:05 | 会場説明 | 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ) |
18:10 | 導入 | 中谷 裕教(東海大学) |
18:25 | ひらめきは準備された心にやってくる ―認知科学における創造性研究―(資料) | 三輪 和久(名古屋大学) |
19:10 | 休憩(10分) | |
19:20 | 創造性における多角的なアプローチ ―認知・身体・他者―(資料) | 清水 大地(東京大学) |
19:55 | まとめ | 中谷 裕教(東海大学) |
20:10 | ディスカッション | |
20:40 | Closing Remark | 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ) |
20:50 | 終了 | |
21:10 | 懇親会 | BEER DINING 銀座ライオン 汐留店 |
ひらめきは準備された心にやってくる ー認知科学における創造性研究ー
講演者:三輪 和久(名古屋大学)
概要: 導入として、人間の創造性に関する様々な見方(例えば、特別な能力/一般的能力)を示しつつ、それぞれの創造観に基づく研究アプローチを説明し、認知科学、認知心理学の領域で、創造性がどのように探求されてきたのかを紹介する。実験に基づく創造性研究の具体例として、創造的認知アプローチを紹介し、そこで明らかにされてきた重要な要因として、「適度な制約」について説明する。さらに、頭の中でどんなに素晴らしいアイデアを考えついたとしても、それを具体化する際には、様々な課題が現れることから、アイデアの物理的具現のプロセスを検討した実験を示し、その課題を明らかにする。 人間の創造性に深く関わる現象として、ひらめき(前触れなく突然訪れるアイデアの発見)がある。ひらめきは、認知科学において、洞察問題解決として研究されてきた。洞察問題解決研究の概要を紹介しつつ、ひらめきがどのようにして訪れるかを示す。ひらめきは、意識と無意識(顕在的思考と潜在的思考)の相互作用によってもたらされるとされている。とりわけ、無意識のレベルにおいて、ひらめきが生まれる準備がどのように整えられてゆくのかについて、実験を通して明らかにされてきた知見を示す。
創造性における多角的なアプローチ ー認知・身体・他者ー
講演者:清水 大地(東京大学)
概要: 全体として、人間の創造活動がいかに営まれるのかというその過程と関連する心理学・認知科学の研究を紹介する。まず、創造活動においてその重要性が主張されてきたアイデア生成やImagination(想像)に関する研究知見を紹介する。アイデア生成については、その程度の測定手法でもDivergent Thinking Tests(拡散的思考課題)やアイデア生成課題を取り上げつつ、人のアイデア生成にいかなる特徴が見られるのか、それらがいかなる状況において抑制・促進されうるかを過去の研究に基づき説明する。 その上で、アイデア生成を促進する可能性を持つ要素としての身体性について、アイデア生成課題・ダンス・絵画等を対象とした研究を紹介しつつ提案・議論を行う。人の高次認知における身体の重要性は議論が行われて久しいが、創造活動過程においてそれらがいかなる影響を与えうるのか、いかなる過程を経て影響を与えるのか、といった点については十分な議論は行われていない。以上の点に関してモーションキャプチャーシステムを利用したケーススタディ等に基づいた提案を行いつつ、その枠組みに関する議論を上記のアイデア生成の知見を踏まえて行う。また、脳機能イメージング研究により明らかにされた脳活動ネットワークと拡散的思考の関係についても議論する。
運営スタッフ
- プログラム委員長:中谷 裕教
- 実行委員長:生島 高裕
- 司会:山川 宏
- 懇親会幹事:横田 浩紀
- 会場担当:森川 幸治、生島 高裕
- 当日会場準備:荒川 直哉、大内 洋三
- connpass:藤井 烈尚
- 写真/動画撮影:門前 一馬
- SNS告知、備品:荒川 直哉
- 会場マイク担当:丸本 椋太、大内 洋三