概要
脳の一般原理として知られる「予測符号化」や「自由エネルギー原理」は、人間のさまざまな認知過程を統一的に説明しうる理論として、多くの研究者の注目を集めてきた。全脳アーキテクチャ勉強会でも、主体性や感情を説明する数理モデルとして何度か議論されている。本勉強会では、環境認識や運動生成、他者とのコミュニケーションなど、人間の多様な認知機能の機序として、また人間のように振る舞う人工知能の設計原理として、これらの理論がもつ可能性を議論する。特に、人間の認知過程を内部観測者視点から解明する発達障害当事者研究と、内部観測者視点からのモデル設計をとおして仮説検証を繰り返す計算論的研究の、二つのアプローチから最新研究を紹介する。2016年に始動し、今年が最終年度となるCREST「認知ミラーリング」での成果を中心に、今後、人工知能研究が人間の知能の理解と支援に役立つ可能性を議論する。
開催詳細
- 日 時:2021年5月26日(水) (18:00~21:00)
- 会 場:オンライン Zoom Meeting
- 参加者:約120人(スタッフ・関係者含む、学生枠約40名)
- 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- 運 営:WBA勉強会実行委員会
- 協 賛:CREST 認知ミラーリング:認知過程の自己理解と社会的共有による発達障害
講演スケジュール
時間 | 内容 | 講演者 |
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17:55 | 開場 | |
18:00 | 開会の挨拶(資料) | 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ) |
18:05 | 趣旨説明 | 長井 志江(東京大学) |
18:15 | 当事者研究について(資料) | 熊谷 晋一郎(東京大学 先端科学技術研究センター) |
19:05 | 休憩(10分) | |
19:15 | 神経回路モデルによる予測符号化理論の構成的検証(資料) | 長井 志江(東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構) |
19:55 | ディスカッション | 大森 隆司(モデレーター)、長井 志江、熊谷 晋一郎、山川 宏 |
20:35 | 次回勉強会の告知 | 大澤 正彦(日本大学) |
20:40 | Closing Remark | 藤井 烈尚(実行委員長) |
20:45 | 終了 | |
20:55 | 懇親会 | オンライン |
当事者研究について
講演者:熊谷 晋一郎(東京大学 先端科学技術研究センター 准教授)
概要: 唯一無二の自分という存在について、共同的に探求する当事者研究という営みは、精神障害のある人々が地域で暮らすなかで直面する様々な逆境に対処するための自助・社会変革の方法として誕生し、その後、依存症、発達障害、子育ての苦労など、障害の有無さえも越えて、あらゆる困難の領域に広がっていった。本講義では、当事者研究の歴史的背景、方法、具体例について紹介する。
神経回路モデルによる予測符号化理論の構成的検証
講演者:長井 志江(東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任教授)
概要: 予測符号化理論はどのようにどこまでの認知機能を説明しうるのであろうか。本講演では、予測符号化理論に基づいて駆動する神経回路モデルを用いた、ロボットの学習実験を紹介する。感覚運動経験をとおした予測機能の発達により、運動生成やそれに基づく社会的能力が連続的に獲得されること、また、発達障害当事者研究から得られた仮説に基づいて、予測信号の不確実性の変動が発達障害を含む認知機能の多様性を生じることを示す。
運営スタッフ
- プログラム委員長:長井 志江
- 実行委員長:藤井 烈尚
- 司会:大森 隆司
- Zoomホスト:生島 高裕、横田 浩紀
- Zoom共同ホスト:福沢 栄治、孫 暁白
- connpass:孫 暁白、藤井 烈尚
- 広報/WBAI事務局:荒川 直哉