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第10回全脳アーキテクチャ勉強会:「全脳アーキテクチャのいま」〜全脳アーキテクチャプロジェクトとそれをとりまく周辺の最新状況報告〜

概要

全脳アーキテクチャの研究アプローチでは「脳全体のアーキテクチャに学び人間並みの汎用人工知能を創る」というミッション・ステートメントを掲げています.本勉強会は,この研究を推進するための人材育成の場を提供しています.


2013年12月19日の初回当時からみると人工知能技術の進展に対する期待感の高まりをうけ,様々なAI関連研究プロジェクトが模索/設立されつつあります.そうした中で我々も全脳アーキテクチャをはじめとするAIのための研究人材の育成を志すNPOとして8月に向けて全脳アーキテクチャ・イニシアチブ(WBAI)の設立準備を本格化しております.

そこで今回は10回目を迎えるにあたり,「全脳アーキテクチャのいま」をテーマとして本勉強会の原点に立ち返りつつ,約1年半の歩みを主要関係者7名のショートトークの中で語る勉強会を企画しました.

 

開催詳細

  • 日 時:2015年5月14日(木) 18:00~21:00(開場: 17:20~)
  • 会 場:NEC玉川ルネッサンスシティホール(玉川事業場)
  • 参加者:約200人(スタッフ・関係者含む)
  • 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
  • 運 営:WBA勉強会実行委員会
  • 後 援:株式会社ドワンゴ
  • 協 賛:日本電気株式会社

 

講演スケジュール

時間 内容 講演者
18:00 開会の挨拶 江村克己(日本電気株式会社 執行役員)
18:05 オープニング:全脳アーキテクチャの全体像(資料 松尾豊(東京大学 准教授)
18:15 人工知能の難問と表現学習(資料なし) 松尾豊(東京大学 准教授)
18:35 全脳アーキテクチャと大脳皮質モデル BESOM の実用化研究の構想(資料 一杉裕志(産業技術総合研究所 人工知能研究センター脳型人工知能研究チーム)
19:05 全脳アーキテクチャを支えるプラットフォーム(資料 高橋恒一(理化学研究所 生命システム研究センター チームリーダー)
19:30 休憩(10分)
19:45 人工知能・ロボット次世代技術開発 岡本洋平(経済産業省 研究開発課)
19:50 汎用人工知能に向けた認知アーキテクチャが解決するべき知識の課題 市瀬龍太郎(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授)
20:10 感情モデルと対人サービス(資料 大森隆司(玉川大学 脳科学研究所 教授)
20:30 若手の会の活動報告(資料
21:00 懇親会

 

全脳アーキテクチャと大脳皮質モデル BESOM の実用化研究の構想


講演者:一杉裕志(産業技術総合研究所 人工知能研究センター脳型人工知能研究チーム)

概要: 最初にドワンゴ人工知能研究所が関与する研究の現状,および今後の方向性を山川氏に代わって簡単に紹介する。次に、産総研での BESOM 実用化研究の構想について述べる。BESOM は大脳皮質に関する知見をもとに開発中の機械学習技術である。
BESOM は制限付きベイジアンネットを用いた一種の Deep Learning であり、ベイジアンネットの特性から事前知識の作り込みが容易、欠損データや半教師あり学習に強い、といった性質が期待される。今後2年以内の BESOM の実用化を目指すとともに、その応用として、視覚野を模倣した画像理解システムと言語野を模倣した言語理解システムの実現を目指す。

 

全脳アーキテクチャを支えるプラットフォーム


講演者:高橋恒一(理化学研究所 生命システム研究センター チームリーダー)

概要: 全脳アーキテクチャ・アプローチをたどって汎用人工知能の完成に至るまでには、今後15年以上に渡る長期の取り組みが必要となるだろう。この活動を支援して基盤的な基礎研究や人材育成に取り組む組織としてNPO「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)」の設立を準備中である。本発表では、WBAIを取り巻く様々な活動のうち、特にソフトウエアプラットフォームBriCA (Brain-inspired Computing Architecture)の設計と開発状況に力点を置き報告する。

 

汎用人工知能に向けた認知アーキテクチャが解決するべき知識の課題


講演者:市瀬龍太郎(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授)

概要: 脳型の計算手法では,知識はニューロン同士の結合の強さなどによって表現され,分散して保持される.これは分散表象と呼ばれ,人間が使っている記号化された知識との関係が分かりづらいという問題点が知られている.汎用人工知能を実現するためには,人間から知識を獲得していく必要があるため,認知アーキテクチャによって,記号化された知識と分散表象の間を変換するメカニズムがサポートされなければならない.本講演では,認知アーキテクチャがどのようにこの問題を解決するのかについて考えていく.

 

感情モデルと対人サービス


講演者:大森隆司(玉川大学 脳科学研究所 教授)

概要: 汎用知能の一つの応用は,職場で人と協働し,家庭で人を支援する,対人サービス領域であろう.そこでは,汎用知能にはユーザーが求めるものを必要なタイミングで提供することが求められる.ユーザーが求めるものを知るには,汎用知能は人間が何を知り,何を考え,どう感じているか,すなわちユーザーの心の動きを推定する必要がある.このような人間の心の動きのうち,知的部分は一般的な「知能」で説明できようが,その背後で「価値」を与える感情については,その研究は途上にある.本講演は,現在進行しているコミュニケーション場面における人間の心の動きの推定と働きかけのダイナミクスについて説明し,今後の展開について考える.

 

若手の会の活動報告


講演者:島田大樹(法政大学)

概要: 全脳アーキテクチャ研究に携わるためには、機械学習や人工知能、生理学や計算論神経科学など幅広い知識が要求されています。全脳アーキテクチャ勉強会はこれまで最先端の関連技術について多岐にわたるコンテンツが取り上げられてきました。一方で全脳アーキテクチャ若手の会は、本体の勉強会でカバーしきれないニーズに答えるべく、機械学習に関する基礎的な勉強会や、脳モデルに関するディスカッション、交流会などを行ってまいりました。また今年9月には全脳アーキテクチャに関するハッカソンを開催いたします。若手の会という名前でありながらも、現在幅広い立場の方々にご参加いただいております。今回は若手の会のこれまでの活動と、今後の活動予定について紹介する予定です。