私達のNPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)は、長期的に「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用人工知能を創る(工学)」を掲げる全脳アーキテクチャ・アプローチによるAI研究開発を促進しています。2015年8月に創設されて以来、この目的のために主に人材育成と研究開発促進を中心とした活動を行なってきました。
(※AGI: 汎用人工知能、Artificial General Intelligence)
昨年より、私達の活動状況や今後の方向性を皆様にお伝えする場として、全脳アーキテクチャシンポジウムを開催しており、前回は5月18日に「加速するAI、加速する世界」をテーマに第1回WBAシンポジウムを開催しました。
その後も人工知能分野の技術進展は留まること無く継続しており、機械学習をアーキテクチャ上で組み合わせることで多様な課題に適用することが試みられ、人工知能技術は研究においては徐々に汎用化しつつ、他方で現実世界へ浸透し応用も進んでいます。これと並行して、社会が新たな技術を如何に受容するかに関わる議論も深まりつつあります。
そこで私たちは本年、創設2周年を迎える8月下旬において「 Beneficial AGIへ」をテーマに、第二回目のシンポジウムを開催することとしました。 ここで第一部ではAGIの実現を目指したWBAIの活動状況やAGI開発を脳に学ぶ意義などについて講演及びパネル討論を行います。次の第二部では、本年新設された、WBAI奨励賞、WBAI活動功労賞の授与式を行います。そして第三部では汎用的な知能技術が段階的に社会に浸透するプロセスを想定し、WBAアプローチの利点なども踏まえながら講演及びパネル討論を行います。
日程は8月29日(火曜日)13:00-17:15にラゾーナ川崎東芝ビル@川﨑(神奈川県)での開催となりますので、こちらから参加申し込みおよび詳細の確認をいただき、奮ってご参加下さい。
概要
日時: 2017年8月29日(火曜日) 午後
会場: ラゾーナ川崎東芝ビル 15F
神奈川県川崎市幸区堀川町72番地34
入場料: 無料
定員: 250〜350人程度
申込: DoorKeeper「全脳アーキテクチャ勉強会」よりお申込み下さい
スケジュール:
【第一部: 脳の汎用性からAGIへ】
13:00〜13:05 オープニング
13:05〜13:30 山川宏: 汎用性を実現するために脳から学ぶべきこと
13:30〜13:55 谷口忠大: 記号創発ロボティクスが目指すAGI ~表現学習を超えて~
13:55〜14:20 金井良太:人工知能の意識と汎用性
14:25〜15:05 パネル討論1:汎用性・自律性・意識を脳に学ぶ
モデレータ:大森隆司、パネリスト: 金井良太、谷口忠大、山川宏
15:05〜15:20 休憩
【第二部:授与式】
15:20〜15:25 WBAI活動功労賞
15:25〜15:30 WBAI奨励賞
【第三部:次第に汎用化するAIが社会にもたらすもの】
15:35〜15:50 山川宏:AGIを人類と調和させるためにWBAIができること
15:50〜16:15 松尾豊: 深層学習の以前・今・これから
16:15〜16:30 坂井尚行: AGI とマーケティングの未来
16:35〜17:15 パネル討論2:汎用化するAIの社会・実業への道筋
モデレータ:高橋恒一、パネリスト:松尾豊、坂井尚行、山川宏
17:15〜17:20 閉会のあいさつ
18:00〜20:00: 懇親会(本会と同じビルの別フロアにて)
講演等アブストラクト一覧
講演者:山川宏(NPO法人WBAI代表/ドワンゴ)
タイトル: 汎用性を実現するために脳から学ぶべきこと
概要: AI技術の進展により、データが大量に得られる状況では、様々な問題解決が実現可能となった。そこで、データが不十分な領域においてもベターな判断や解決策を見出す汎用的な知能や、フロンティア領域において知識を拡大する自律性的能力への興味が高まっている。私達NPO法人WBAIでは、こうした汎用性や自律性をもつ知能を支える認知アーキテクチャとして脳を参考にすることが技術的に有望であると考え様々な事業を行っている。ここでは、全脳アーキテクチャ勉強会、神経科学者向けのAIスクール(NICO2AI)などの人材育成事業や、様々なハッカソンの開催、全脳コネクトームアーキテクチャの開発、ロードマップの作成などの研究開発促進事業のほか、関連組織との連携状況などについても紹介する。
講演者: 谷口忠大 (立命館大 )
タイトル: 記号創発ロボティクスが目指すAGI ~表現学習を超えて~
概要: AGI(Artificial General Intelligence)に注目が集まっている。汎用人工知能とも訳されるが人間の知能はそもそも道具としての知ではなく、主体としての知であり、そのような自律知をいかに構成するかがAGIの真のチャレンジである。人工知能の歴史を振り返っても、人間の知能の進化論的経緯を振り返っても、言語的知能(記号的知能)を身体性に基づき、感覚運動器に接地させながらボトムアップに把握することは重要な問題であり、AGIの中心的な課題であるとも言える。記号創発ロボティクスはこのような問いに答えようと教師なし学習の技術を積み重ねながら、実世界での言語獲得ロボットの構成に関して一連の成果を生んできた。本講演では記号創発ロボティクスのこれまでの成果を概説するとともに、AGIとの関連から今後の展望を述べる。
講演者: 金井良太(アラヤ・ブレインイメージング)
タイトル:人工知能の意識と汎用性
概要:人間や動物において、脳から意識がどのようなメカニズムによって生じてくるのかという問題は、現代科学において答がでておらず「ハードプロブレム」とも呼ばれている。意識を科学で扱うことの難しい理由として、我々がモノを見たり聞いたりしたときに生じる主観的経験を直接的に科学的な研究手法で扱うことが難しいことがある。特に、意識によって実現される機能が何であるか客観的に評価することが困難である。一方、現在の人工知能研究が目指す1つの到達点である「汎用人工知能」においては、知能というものは機能的内容により定義されるため、知能システムにおける主観的経験の有無とは無関係であると見なされ、意識と人工知能の関係については歴史的に独立な研究対象と見なされがちであった。本講演では、神経科学的知見から意識の機能についての仮説として、感覚運動ループの関係性を学習した生成モデルによる反実仮想的な未来(例えば、自分の行動が環境からの入力情報をどのように変化させるかなど)の状態生成が関わっているという「意識の情報生成理論」を提案する。意識の機能を主観的な生成モデルによって過去や未来のシミュレーションを可能とし、現在の知覚内容(クオリア)さえ外界の情報処理の付随現象ではなく、主体的に生成された情報の構造であると議論し、この機能がまさに汎用性の高い知能の実現に深く関わっている可能性について論じる。
モデレータ(パネル討論1): 大森隆司(玉川大学)
講演者:山川宏(NPO法人WBAI代表/ドワンゴ)
タイトル:AGIを人類と調和させるためにWBAIができること
概要: AGIが人類に対して大きな影響を与えうる可能性を踏まえれば、その開発がベターな方向に進むように促進する公益組織の存在意義は、時として大きなものとなりうるだろう。そこで私達NPO法人WBAIは「人類と調和した人工知能のある世界」をビジョンとして掲げ、全脳アーキテクチャ・アプローチよるオープンな共創がAGIのベターな開発であると考えその促進を進め、その活動を広げることで影響力を高めたいと考えている。AGIをベターなものとするために脳に学ぶその主な理由は、人間と同じように振る舞い思考するAGIをつくりやすこと、さらに脳のアーキテクチャー上の共同作業でAGIを多くの人々の共有物に誘導しうる点である。さらに神経科学と機械学習の発展により脳に学んでAGIを構築すること自体の技術的な有望性も高まっていることなどについて述べる。
講演者: 松尾豊(NPO法人WBAI副代表/東京大学)
タイトル:深層学習の以前・今・これから
概要: TBD
講演者:坂井尚行(合同会社ハイロード・コンサルティング(会社設立準備中))
タイトル: AGI とマーケティングの未来
概要:近年、ビジネスにおいても特化型AIの事例が増えてきた。
モデレータ(パネル討論2): 高橋恒一(NPO法人WBAI副代表/理研)
シンポジウム運営スタッフ
- プログラム委員長:山川宏
- 実行委員長 :川村正春
- 司会 :さかき漣
- 副実行委員長 :生島高裕
- 登壇者調整 :山川宏
- 会場調整 :山本麻央
- 広報 1 :坂井尚行
- 広報 2 :山本麻央
- 賛助会員 :山本麻央
- Doorkeeper :生島
- WBAI HP 作成 :山川宏
- ポスター作成 :藤井烈尚
- タイムキーパー :中司浩史
- ビデオ撮影 :門前一馬
- 会計 :山本麻央
- ニコ生 :上野道彦
- 備品 :上野道彦
今後の主な活動
主催: NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ (運営支援: WBAIサポータズ)
後援: 人工知能学会
後援: 神経回路学会
後援:ドワンゴ人工知能研究所
後援: 新学術領域研究 人工知能と脳科学の対照と融合