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第3回全脳アーキテクチャ・シンポジウムを開催しました

2013年以降、私達は脳を参考として汎用的な知能をもつ人工知能を構築すというアイディアを提唱してきた。その後4年半が経過する中、AIは深層学習を起爆剤としてさらに持続的に発展し、神経科学の研究も急速に知能に関わる高次機能の解明に向かいつつある。

こうした中でWBAIは人類と調和する形で、「脳全体のアーキテクチャに学び人のような汎用人工知能を創る(工学)」ことの促進を進めるために議論を深めつつ、さらに、ハッカソンなどの活動を通じて脳に学んだAGI開発のあり方を実践的に問い続けている。

そこで本シンポジウムでは、単に脳が汎用だからという理由を超えてAGIの構築はなぜ容易ではなく、その上で「なぜ脳に学ぶとで知能の汎用性に近づけるのか?」という、汎用知能を作り上げるため道筋とプロセスについて、さらに、「脳に学ぶことで人類に人類にとって有用な形で汎用人工知能を創ることにいかに貢献できるのか」といった点について語り、さらに近い未来において、いかにして社会実装につなげうるかを議論する場としてシンポジウムを企画しました。

シンポジウム開催詳細

日時:2018年5月8日(火) 13:30〜18:00 (12:45開場)
場所トヨタ自動車株式会社 東京本社 B1大会議室:東京都文京区後楽1丁目4-18
参加費:無料
主催:NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
特別協賛:トヨタ自動車株式会社 (ご厚意による会場ご提供)
協賛:新学術領域人工知能と脳科学の対象と融合、理化学研究所 革新知能統合研究センター 、文部科学省ポスト「京」萌芽的課題4「脳のビッグデータ解析、全脳シミュレーションと脳型人工知能アーキテクチャ」、文部科学省 新学術領域研究(研究領域提案型) 脳情報動態を規定する多領野連関と並列処理
後援:Future of Life Institute、Good AI、Beneficial AI Japan、日本神経回路学会、株式会社ドワンゴ、人工知能学会

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講演スケジュール

時間 内容 講演者
13:00 開場
13:30 開会のご挨拶
13:35 脳型AGI開発を着実に進めるために 山川宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)
14:00 脳の回路モジュールはなぜうまく繋がれるのか 銅谷賢治(沖縄科学技術大学院大学)
14:40 AI研究のガイドとしての能力マップの開発 大森隆司(玉川大学工学部・脳科学研究所)
15:00 パネルディスカッション「なぜ脳に学ぶことで知能の汎用性に近づけるのか?」 モデレータ: 山川宏、パネリスト: 銅谷賢治、大森隆司
15:35 表彰式
15:45 休憩(15分)
16:00 WBAI活動の拡がり 山川宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)
16:15 汎用AIに自律性は必要か? 栗原聡(慶應義塾大学理工学部)
16:35 汎用人工知能と社会 中川裕志 (理化学研究所革新知能統合研究センター)
17:15 パネルディスカッション「脳型AIを良き形で実装するために」 モデレータ:高橋恒一、パネリスト: 中川裕志、栗原聡、山川宏
17:45 閉会の挨拶
18:30 懇親会/意見交換会(会場:同ビル内3F 「レストラントレニア」)

講演等アブストラクト一覧

タイトル:脳型AGI開発を着実に進めるために

講演者:山川宏(NPO法人WBAI代表 / 株式会社ドワンゴ)
概要:

NPO法人WBAIは、そこで開発促進される全脳アーキテクチャ(WBA)が多くの人々に共有される状況を目指している。ここ数年はハッカソン等の活動を行いながら、多くの研究者/エンジニアらが開発に参加するためのオープンプラットフォームの開発を進めてきた。これまでは仮想学習環境やミドルウェアなどの整備が中心であった。
しかし現在は、脳器官ごとの開発仕様としてのフレームワークや、汎用人工知能(AGI)が実現すべき能力の地図といった、知識データベースの構築に取り組んでいる。これらを用いてWBAの部品を作る個別の開発プロジェクトを設計すれば、脳型AGIの完成に向けての整合性を保ちうるだろう。
こうして近いうちに、多くの技術者を巻き込みながら、脳としての機能部品を一通り揃えたシステムの開発を大規模に行える状況をつくることを目指す。こうして,神経科学・認知科学・人工知能・機械学習・ソフトウエア工学などを含む広範な専門能力を兼ね備えた人材は存在しない状況を克服してゆく。
但し、完成したAGIは、未知の状況に対して自律的に対応する知能が必要である。そうした能力があってはじめて、所謂AI科学者として、科学技術の発展を大きく加速できる。そのためには、知識をよりメタなレベルで操作する能力が必要となる。そこで今後は、脳の情報動態を参考としつつ、タスクの実行に有効な知識の組合せを探し出す技術研究についても促進してゆきたい。

タイトル:脳の回路モジュールはなぜうまく繋がれるのか

講演者:銅谷賢治(沖縄科学技術大学院大学)
概要:
機能的MRI研究では、感覚刺激はほとんど同じで処理内容が異なるテスト課題と対照課題を用意して、それらを行うときの脳活動を比較することで脳のどの部位がどの処理に関わると結論づける、というのが基本的なパラダイムである。しかしある処理が必要とされる時に、それを担う脳回路がなぜ都合よく選択され接続されてしまうのかは実はほとんどわかっていない。ディープニューラルネットにより視覚認知や言語処理など特定用途では高性能なモジュールの構築が可能になった今日、それらを新たな課題や状況に応じていかに選択し組み合わせるか、いわばネットワークのネットワーキングが自律的で汎用的な人工知能の構築に向け最重要のチャレンジである。本講演では、脳のモジュール形成と柔軟な繋ぎかえがいかに実現され得るのかに関して、計算理論のレベルと神経解剖学・生理学のレベルそれぞれで、注目すべきモデルとデータを概観し今後必要となる研究について議論する。

タイトル:AI研究のガイドとしての能力マップの開発

講演者:大森隆司(玉川大学工学部・科学研究所)
概要:後日記載

パネル討論1:タイトル: なぜ脳に学ぶことで知能の汎用性に近づけるのか?

モデレータ:山川宏
パネリスト:銅谷賢治、大森隆司

タイトル:WBAI活動の拡がり

講演者:山川宏(NPO法人WBAI代表 / 株式会社ドワンゴ)
概要:
全脳アーキテクチャ(WBA)は、汎用人工知能(AGI)である。AGIは知能の殆どの面において人を凌駕するため、これが完成すれば、その社会的なインパクトは良くも悪くも大きくかつ多岐に渡る。こうした背景から、私たちNPO法人WBAIは、WBA自体の開発を促進しつつも、そうした影響に配慮する必要があると考えてきた。昨年(2017年)は「人類と調和する人工知能のある世界」をビジョンとする基本理念として策定し、その後、AIと社会のつながりに配慮する国内外の組織などとの連携など活動の幅を広げている。
またそもそもWBAアプローチで作られるAGIが脳型であるため、技術的には人のような価値観をもち人のように振る舞うAGIの開発につながりやすい。同時にそうした技術は、特に人と接点を持つシーンにおいて有用性が高いため、何れにしても実現されるであろう。そうであれば、私たちはWBA開発を促進しつつ、脳型AIの技術的な特性への理解を深めるうる。そこで、WBAを作ると同時に人類にとって望ましい形で、人型AIの設計について考える機会をもつので、そうしたチャンスを活かしたいと考えている。

タイトル:汎用AIに自律性は必要か?

講演者:栗原聡(慶應義塾大学理工学部)
概要:
用途限定AIと汎用AIとの違いは、単に対応可能なタスク数だけではなく、高い汎用性を発揮するためには「自律性」が必要不可欠である。自律性といっても様々な段階があり、エアコンが温度を一定に保つ機能もちゃんとした自律制御である。これに対し、汎用AIに求められる自律性は文字通り、自らの意思(目的)に基づいて自由度の高い行動選択が出来る能力であり、まさしく「人」のような自律性である。物理的である必要はないものの身体性も必要になるであろう。となると、そのような自律AIが今後社会に進出する状況を想定した場合、AI開発者は単に自律AIを開発すればよい、というわけにはいかなくなる。汎用AIにとっての自律性を整理するとともに、自律型AIの開発における課題について考察したい。

タイトル:汎用人工知能と社会

講演者:中川裕志 (理化学研究所 革新知能統合研究センター グループディレクター)
概要:
AIの脅威でしばしば引き合いに出されるBostromの超知能(Super Intelligence)がAGIの後に必ず現れるかといえば、その確率は低い。Bostrom自身もそのことを認めているが、可能性がゼロではない以上、それに対して用心しておこうというのが彼の主張である。では、他にどのようあ可能性があるだろう?AGIに自己保存目的とりわけ種としての保存目的があれば、そのコピーをあちこちの異なる環境に作るであろう。これらのAGIが群雄割拠する状態についてなんらかの拮抗点があることについて考察してみる。
次にAGIに行き着く前のAIであっても人間社会に種々にコンフリクト、例えばAIが人間から大量に職を奪うなどという状況を巻き起こす問題について考察する。 この問題の一つの表れとして、ロボット法の分野で議論されているAIの社会における立場付け、すなわち、完全な法的人格、適格な行為者、ツール、という3つの立場におけるAIの負う責任などについて検討してみたい。

講演者略歴:
1975年、東京大学工学部卒業。1980年、東京大学大学院修了(工学博士)
1980年から1999年まで横浜国立大学勤務。1999年から2018年3月まで東京大学情報基盤センター教授。2018年4月より理化学研究所革新知能統合研究センター グループディレクター。
機械学習、プライバシー保護、人工知能倫理などの研究に従事。

パネル討論2:タイトル: 脳型AIを良き形で実装するために

モデレータ:高橋恒一(NPO法人WBAI副代表 / 理研)
パネリスト:中川裕志、栗原聡、山川宏

表彰式

WBAI活動功労賞受賞者

  • 門前一馬
    関連するイベントの写真および動画の撮影、編集、公開を無償で行うなど、全脳アーキテクチャに関する広報に大きく貢献しました。

WBAI奨励賞受賞者

  • 大澤正彦
    海馬を参考にしたRestricted Boltzmann Machine(RBM)の拡張モデルや、前頭前野の知見に基づいた複数モジュールの調停手法であるAccumulator Based Arbitration Model (ABAM)を提案し、国内外から高い評価を得ました。また、いずれの手法も公開し公益性に寄与しました。
  • 谷口彰
    海馬体に対応づく自己位置推定と地図生成機能、および、新皮質に対応づく音声情報からの単語分割や位置と画像と単語などのマルチモーダル情報に基づくクラスタリングを統合したモデル(SpCoSLAM)を提案および実装し、国内外の学会において発表し、かつソースコードを公開しました。

シンポジウム運営スタッフ

担当 氏名
プログラム委員長 山川宏
実行委員長 川村正春
司会進行 さかき漣
司会スライド制作 川村正春
会場 森井明
VIP対応 佐野仁美
懇親会 近藤昭雄
広報(メディア) 坂井尚行
広報(賛助会員) 坂井尚行
Twitter 唐川莉乃
Doorkeeper 藤井烈尚
ポスター制作 藤井烈尚
タイムキーパー 近藤昭雄
タイムテーブル 川村正春
写真撮影 門前一馬
ビデオ撮影 藤井烈尚
会計 森井明
ニコ生 森井明
備品 佐野仁美

 

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