概要
神経科学に接地した形で認知行動レベルにおける総合的な理解を得ることは人間科学における大目標の一つである。この理解を得るためには、第一にタスクに紐づく計算機能を適切に分解することで、蓄積が進む解剖学的構造と神経活動現象に対応づけるという課題がある。第二に、脳が相当に密連携したシステムであることを踏まえ、それら知見を標準的な形で蓄積することで脳全体におけるメゾスコピックレベルの知見を包括的に把握可能とするという課題がある。 最初の課題に対応するために、WBAIではソフトウエア実装に有用な計算機能の情報を、主に解剖学的構造を制約として付与する手法であるStructure-constrained Interface Decomposition Method (SCID法) を発展させた。本レクチャーでは、脳の広範囲において機能仮説を構築できるSCID法について概説する。 2つ目の課題に対応するために、認知行動レベルに関わる標準的なデータとして脳参照アーキテクチャ(BRA)の定義を進めた。BRAには脳全体の構造を基盤とした脳情報フロー形式と、そこにタスクに依存した機能と活動を付与されている。BRAは一定の品質を保つ必要があることから、その審査を行うための準備を進めており、本レクチャーでは作成した機能を含むBRAデータを正式に登録するための審査手続についても概説する。 BRAデータの形で、脳全体における様々な脳領域の機能がタスク階層に紐付いた形で整理されてゆけば、それを俯瞰的に利用することで、知識が断片化していた状況では得られなかった気づきを得たり、脳の広範囲における機能的なシミュレーションの基盤として利用したりできる。これは汎用人工知能含む脳型のソフトウエアの開発を促進するだろう。
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開催詳細
- 日 時:2021年2月7日(日) (15:00~17:00)
- 会 場:オンライン Zoomウェビナー
- 定 員:300名
- 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
- 運 営:WBA勉強会実行委員会
講演スケジュール
時間 | 内容 | 講演者 |
---|---|---|
14:55 | 開場 | |
15:00 | 開会の挨拶 | 田和辻 可昌(早稲田大学) |
15:05 | 脳機能の体系的理解を目指して(資料) | 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ) |
15:50 | 質疑応答(5分) | 山川 宏 |
15:55 | 休憩(10分) | |
16:05 | SCID法の実例(資料) | 布川 絢子(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ) |
16:25 | BRAの審査と登録(資料) | 山川 宏 |
16:40 | 質疑応答(15分) | 田和辻 可昌 |
16:55 | クロージング | 藤井 烈尚(実行委員長) |
運営スタッフ
- プログラム委員長:山川 宏
- 実行委員長:藤井 烈尚
- Zoomウェビナー担当:孫 暁白、生島 高裕
- connpass:中村 真裕、藤井 烈尚
- 広報:荒川 直哉(WBAI事務局)