第15回全脳アーキテクチャ勉強会〜知能における進化・発達・学習

第15回全脳アーキテクチャ勉強会 全脳アーキテクチャ勉強会

全脳アーキテクチャ(WBA)・アプローチによる汎用人工知能の構築においては、脳における多様な学習能力に対する理解にもとづいて、機械学習を結合して認知アーキテクチャとして実装してゆきます。

WBAアプローチからのシステム構築においては、アーキテクチャの設計と、その中にあるモジュールの機械学習に分離しようとしている。対して生物においては、進化で獲得した部分がアーキテクチャに対応し、成人があらたな技能や知識を獲得することは学習に対応するでしょう。

しかしながら生物においてはその中間的な位置づけとして、発達という段階が存在し、そこではある程度想定された環境において、比較的定型的なかたちで能力を獲得しているともいえます。WBAは複数の機械学習が結合されたシステムであるため、これは機械学習の観点からみればモジュールをどういったスケジュールで学習すべきか(カリキュラム学習)といった問題にも関わります。

本勉強会においては、川合伸幸氏からは進化の観点から、岡田浩之氏からは発達の観点からご講演をいただき、その後に中村友昭氏を交えて機械学習の観点からパネルディスカションを行います。

勉強会開催詳細

  • 日 時:2016年6月14日(火) 18:00~21:30 (17:30開場)
  • 場 所:トヨタ自動車株式会社 東京本社 B1大会議室
    東京都文京区後楽1丁目4-18 http://www.toyota.co.jp/jpn/company/about_toyota/outline/tokyo_head_office.html (トヨタ自動車株式会社様のご厚意による会場ご提供)
  • 定 員:220名(定員に達し次第締め切らせて頂きます)
  • 参加費:無料
  • 主 催:NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
  • 後 援:株式会社ドワンゴ

講演スケジュール

18:05-18:10 オープニング 山川宏氏(ドワンゴ)

発表資料:全脳アーキテクチャ勉強会「知能における進化・発達・学習」

18:10-19:00 「ヒトの知性の進化」 川合伸幸氏(名古屋大学)

動物は環境の変化に合わせて、自分の行動を変容させますが、同じことが繰り返されると、事前に環境に合わせた行動をとることができるようになります。強化学習といわれるこの単純な学習は、無脊椎動物でもみられます。しかし、学習したこと(知識)を、自由にあらゆる状況で発揮できるわけではなく、身体を自動的に制御する機構の制約を受けて、学習したことが遂行できないことがあります。このような現象は、ほ乳類のラットでさえ見られます。

霊長類ともなれば小学校低学年に比肩するほどの知的な学習をしますが、教えられたことを学習するに留まり、得られた知識から新たな問題を解決する推論の能力は限られています。ヒトと比べれば教えられていない問題を解く能力は制限があります。

しかし、霊長類やカラスなどは、「ここに無いもの」を使って問題を解決することができます。道具の製作と使用です。チンパンジーやカラスは、いくつかの部品を組み合わせたメタ道具を作ることもできます。このような能力の源泉には想像力が必要です。想像力を観察することはできませんが、その発露ともいえる「見立て」は、ヒトではごく幼い頃から見られます。いま・そこに・あるもの・から離れた自由な想像にもとづいて創造が行われるのです。

ヒトとほかの動物の知識でもっとも異なるところは、知識の伝承です。ヒトは言語を使用する前から、技を伝承してきました。すなわち文化が蓄積されてきたのです。このことにより、獲得した知識が一世代で消滅するのではなく、伝承することに蓄積され、しかも後進は最初から学習する必要は無く、すでに体系づけられた知識や技を、他者から効率よく学ぶことが可能で、そのことにより、さらに知識が飛躍的に高まります。Google Scholarでおなじみの「巨人の肩に立つ」は、それまで知識に立脚して自身の学問を展開したニュートンが、先人の業績に対して敬意を払って述べた言葉です。

AIによって、他人から学ぶシステムを作ることはできるかもしれません。しかし、わたしたちは発達ともに学び合う存在となり、そして教える立場にも立つのです。そのような役割の転換があって、はじめて知識を伝承すること可能で、そのことによって蓄積された知識がわたしたちヒトを知的な存在としているのです。

19:00-19:15 休憩
19:15-19:20 創設賛助会員プレゼン 「最近の対話テクノロジーとNextremerの取り組み」株式会社Nextremer 古川朋裕氏
19:20-20:05 「発達する知能 -ことばの学習を可能にする能力―」 岡田浩之(玉川大学)

発表資料:「発達する知能 -ことばの学習を可能にする能力―」

言葉の獲得は抽象的で概念レベルの複雑な情報に意味を与える高次の知覚過程であり、人間の認知過程の重要な要素の一つである。この高次の知覚過程により、漠然とした環境情報は心的表象へと組織化されていく、さらには言葉になる考える。

しかしこれまでの人工知能研究はこの高次の知覚過程を無視し、既成の表象を予め作ることで対処しようとし、人間の認知過程の理解という点ではことごとく失敗してきた(Hofstadter, 1992)。同様に認知科学研究においても、当初は知覚的な認識論が主流であったが、人工知能や計算科学、脳科学などの影響により、認識論の主流は非身体的、非知覚的なものとなり、知覚的な認識論の立場は失われていった(Barsalou,1999)。

しかし多様な媒体の処理がある程度できるようになってきた現在、それらの限界を超えた議論が可能になったと考えられる。

発表では非知覚的な認識論が抱える問題にとらわれることなく、複雑で外乱に富んだ実世界から得られる情報に関して、十分に機能的な概念形成システムを目指した知覚的シンボルシステムの実現に向けた議論を行いたい。

特に、音象徴性(音と意味の間の関係)と対称性推論に注目し、記号としてのことばと意味を結び付ける最初の足がかりとなっている可能性を示唆する。

20:10-21:30 パネル討論:「 汎用人工知能に発達は必要か?」

発表資料:「 汎用人工知能に発達は必要か?」

パネリスト: 川合伸幸氏、岡田浩之氏、中村友昭氏
モデレータ: 山川宏氏

問題提起(最初の15分): ロボティクス/機械学習の立場から: 中村友昭 (電通大) タイトル:言語を獲得するロボットの実現に向けて 概要:言語を獲得するためには、概念形成・語彙獲得・記号接地・文法の獲得といった様々な学習が必要となる。 本発表では、確率モデルを用いてこれらの問題を定式化し、実装したロボットについて紹介する。 ロボットは、自身が取得可能なマルチモーダルなセンサ情報から概念を形成し、 人の教示音声から語彙を獲得し、形成した概念と結びつけることにより言葉の意味を学習することができる。 さらに、人からの教示文中の概念クラスの出現順序を文法として学習する。 文法を獲得することで、ロボットが観測しているシーンを言語で表現することが可能となる。 この言語獲得ロボットを基に、パネル討論のテーマである「発達」について議論する。

21:30 – 23:00 懇親会(自由参加)

本勉強会の報告書はこちらでご覧頂けます。

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