第22回 全脳アーキテクチャ勉強会~自律性と汎用性~

概要

現在の人工知能ブームにおける「人工知能 (AI) 」は、道具としての「知的 IT 技術」と呼んだ方がその実体に合致しており、知的 IT 技術を AI に進化させるための重要な能力が「自律性」です。加速する少子高齢化社会においては、AI を労働力として積極的に導入することが急務ですが、その際、人と AI とのインタラクションにおいて、人が AI に脅威や不安を感じることがあってはなりません。人が AI に対して親近感や安心感を感じ、人間同士のような一体感を AI に対して感じるためには、AI が自発的・能動的に人に働きかけることを可能とする自律性が極めて重要な要素となります。我々生物には自律性があり、それは「生きる」という究極の目的があるからです。では自律型 AI にとっての目的はどのようなものなのでしょうか? また、用途限定 AI から汎用 AI への進化においても自律性は重要なキーワードです。より多くの用途に対応可能となることで AI の汎用性は増すように思えますが、多くの用途をこなす AI はどのようにして自分の能力を使い分ければよいのでしょうか? 予め設定しておけば十分なのでしょうか? 今回は、「自律性と汎用性」をテーマとして、脳科学の観点から、そしてロボットの観点から考えてみたいと思います。

勉強会開催詳細

  • 日 時:2018年6月28日(木) 18:00~20:30
  • 会 場:東京大学医学部教育研究棟14階 鉄門記念講堂 東京都文京区本郷 5-24-13(医学部教育研究棟)
  • 定 員:200名
  • 主 催:NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
  • 協 賛:文部科学省新学術領域「脳情報動態」
  • 後 援:株式会社 ドワンゴ

プログラム

時間 内容 講演者
17:30 開場
18:00 会場説明 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表)
18:10 開会の挨拶 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ代表)
18:15 導入(資料 栗原 聡(慶應義塾大学理工学部)
18:25 創発インタラクションの意義:機能分化に対する変分原理と数理モデル(資料 講演者:津田 一郎(中部大学創発学術院)
19:10 休憩(5分)
19:15 デザインされた行動から自律発達的な行動へ:インテリジェンスダイナミクスに関して 講演者:藤田 雅博(ソニー株式会社)
20:00 ディスカッション
20:20 Closing Remark 山川 宏(ドワンゴ人工知能研究所)
創発インタラクションの意義:機能分化に対する変分原理と数理モデル

講演者:津田 一郎(中部大学創発学術院)

概要:学習するニューラルネットとプログラム駆動型の人工知能の融合は1980年代から始まり今日の爆発的な進展へと至っています。この融合研究の進展の中で、私たちは創発インタラクションの果たす役割は大きいと考えています。私たちは CREST の共生インタラクション領域 (https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/research_area/ongoing/bunyah29-4.html) の中のプロジェクト (http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/kawai/crest/) において特に脳の進化的及び機能的結合を介した機能分化に着目し、複雑な環境に対して機能分化を通じて即時適応する機構の解明とそれを実現するエージェントの提案を目指して研究を開始しました。講演では脳の機能分化を変分原理で定式化する試みと具体的な数理モデルの結果をお話しする予定です。

デザインされた行動から自律発達的な行動へ:インテリジェンスダイナミクスに関して

講演者:藤田 雅博(ソニー株式会社)

ソニー(株)にて、1993年よりエンターテイメントロボットAIBO、QRIOの開発および商品化に従事、2004年ソニーインテリジェンスダイナミクスラボラトリー設立、自律発達に関する研究をおこなう。2008年より力制御型ロボティクスの研究開発、2018年新aibo商品化、現在、ソニーのAIxRoboticsに関する活動に従事。

概要:現在の多くのロボットあるいはエージェントは開発者が状態遷移あるいは木構造による行動のデザインを行い、内部・外部の状況の応じてそれらの行動が発現するものが多い。しかし、このようにデザインされた行動では、複雑な状況における行動などを記述することが困難である。また、新しい行動を創発していくことが困難である。それらの課題意識から、自律発達的な行動創発を行うアーキテクチャを開発し、プリミティブな実験をおこなった。発表は、2004年~2011年に行われたインテリジェンスダイナミクスと名付けたアプローチに関して説明する。


運営スタッフ

  • プログラム委員長:栗原 聡
  • 実行委員長:近藤 昭雄
  • 登壇者調整:佐野 仁美
  • 会場調整:佐野 仁美
  • 懇親会幹事:佐野 仁美
  • 写真撮影:門前 一馬
  • 動画撮影:藤井 烈尚
  • connpass:藤井 烈尚
  • 司会進行:栗原 聡
  • 会場マイク担当等:大畑 賢太郎
  • 備品:森井 明

外部リンク