近年における計算機リソースの増大と機械学習の進歩、さらに神経科学知見の急速な蓄積を背景とすれば、脳全体の情報処理アーキテクチャを参考として人間並みに汎用的な知能を備えた高度な人工知能が作りうるのではないかと、東京大学の松尾豊氏、産総研の一杉裕志氏らと共に考え始めたのが、2013年夏の懇親会でのことでした。
程なく、その推進には人工知能、神経科学、認知科学、機械学習などの多分野にまたがる人材の結集と、そうした知識を備えた新たな研究人材の育成が急務と思い至りました。
そこで脳全体のアーキテクチャを扱うことで人工知能を構築する方向性を「全脳アーキテクチャ」と名付け、初めて公に勉強会を開催したのは2013年12月19日のことでした。その後、この方向性に共感いただいた多くの皆様方に勉強会などにお集まりいただき、多岐にわたる支援をいただくことで今日まで発展してまいりました。
その中において、
「脳全体のアーキテクチャに学び人間のような汎用人工知能を創る(工学)」
というミッション・ステートメントを掲げる全脳アーキテクチャ・アプローチが生み出されました。
2015年、世界においても汎用人工知能という目標を明確にしながら技術開発を行う組織が目立ち始めています。そこでこれまでの期待に応えつつ、全脳アーキテクチャの研究活動を更に加速するには、長期にこの目標を堅持しつつ、研究開発コミュニティの活動を支える組織が必要であると考えます。
この度、本活動にご協力頂いている方々とともに特定非営利活動法人として「全脳アーキテクチャ・イニシアティブ」を2015年8月21日に設立するに至りました。本組織では、将来の人工知能研究を担う人材育成を目的とした教育活動を強化すると同時に公益性の高いソフトウェア基盤技術の開発を進めてゆく所存です。
多くの皆様の温かいご支援をお待ちしております。
特定非営利活動法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
代表 山川 宏