WBAI奨励賞受賞者

このページでは、過去のWBAI奨励賞受賞者の方々を紹介します。
本賞は、脳型汎用人工知能の(国内外の)技術開発の促進において波及効果の高い開発成果を残した者に与えられます。

2023年受賞者

孫 昱偉(Sūn, Yùwěi

汎用AIの中心的な能力である「知識再利用能力」に関する研究において、分散型ニューラルネットワークのアーキテクチャレベルに関わる新しいアルゴリズムを提案しました。特に、脳のメカニズムとも密接に関係するグローバルワークスペース理論を取り入れるなどにより、AIと神経科学の交差点に波及効果をもたらしました。さらに発展的なメタラーニング研究の方向性も示しており、将来性を含めて高く評価しました。

2022年受賞者

太田 宏之(おおたひろゆき)

大脳基底核における報酬予測誤差の正負に対する学習割合が動物実験で異なること、および、それが報酬疎な環境での報酬獲得に有効であることを計算機シミュレーションで示した結果を国際誌で発表しました。また、当法人主催の勉強会において、脳における強化学習について講演を行ない、脳型人工知能における意思決定機構の構築に貢献しました。

2021年受賞者

布川絢子(ふかわあやこ)

脳の解剖学的構造に整合するように計算機能を割り当てて、脳の参照アーキテクチャ(BRA)を構築する研究を最初に主導的に実践しました。その内側嗅内野の経路統合機能への適用結果を国際誌に発表しました。また、このBRA構築法をSCID法として定式化することにも携わりました。これらを通して、脳の様々な領域に対して脳型人工知能の仕様設計を可能としました。

2020年受賞者

Matthew Crosby and Benjamin Beyret

動物のもつ多様な常識的推論(対象物の永続性、数値能力、一段階の因果関係推論など)の研究開発を促進するためのプラットフォームとして、仮想実験環境、評価システムなどの実装を行い、それを用いて、世界中から60以上のチームが参加するコンペティションを実施しました。動物の知能はヒトのような知能の基盤であるため、こうした活動は汎用人工知能の技術開発を促進することとなります。

鈴木雅大 (すずきまさひろ)

モダリティの差異を超えて情報を双方向に変換できる Joint Multimodal Variational Autoencoder (JMVAE) の提案と開発および、認知システムであるNeuro-Serketの共同開発など、脳型人工知能の基盤となる深層生成モデルの研究開発において多大な学術的な貢献がありました。さらに独自開発ツールであるPixyzを用いて前記のようなモデルの実装を促進することでその波及効果を高めました。
(※ SERKET = Symbol Emergence in Robotics tool KIT )

2019年受賞者

吉田尚人

生存確率の最大化問題と捉えた強化学習アルゴリズムから餌の摂取、毒の忌避、エネルギー獲得といった恒常性の性質が創発することを3D仮想環境上の実験で示し、国際誌(Journal of Artificial General Intelligence)に論文掲載しました。恒常性を目的とした行動の創発は、自律的な生存能力の実現、情動や感情のモデル化の基盤、手段的副目標の収斂の議論の参考などの面において脳型汎用人工知能への波及効果が大きいものです。

水谷治央

脳型人工知能の開発の基盤知識として必須の構造に関する知識を、脳神経回路(コネクトーム)から抽出する新しい研究アプローチ「コネクトーム情報学」を立ち上げ国内外の学術発表を行いました。コネクトーム情報学は、WBAI内の研究活動として継続されており、波及効果が大きいものです。またハンズオンとオンライン講義からなる「ニコニコAIスクール」を開校、運営し、脳型人工知能開発者の育成に貢献しました。

2018年受賞者

大澤正彦

海馬を参考にしたRestricted Boltzmann Machine(RBM)の拡張モデルや、前頭前野の知見に基づいた複数モジュールの調停手法であるAccumulator Based Arbitration Model (ABAM)を提案し、国内外から高い評価を得ました。また、いずれの手法も公開し公益性に寄与しました。

谷口彰

海馬体に対応づく自己位置推定と地図生成機能、および、新皮質に対応づく音声情報からの単語分割や位置と画像と単語などのマルチモーダル情報に基づくクラスタリングを統合したモデル(SpCoSLAM)を提案および実装し、国内外の学会において発表し、かつソースコードを公開しました。

2017年受賞者

中村政義

ゲームエンジンUnityとDQNベースのエージェントの組み合わせによるLife in Silico (LIS)という人工知能の学習環境を一般ユーザが利用しやすい形で開発しました。それを用いたハッカソンイベントで約100名のエンジニアによる開発を行い、多数のWebメディアに掲載されました。さらにLISは書籍でチュートリアルが記載され、初学者へのツールとして認知され、ゲームカンファレンスCEDEC2016などでの講演により、ゲーム業界に波及もうながしました。これにより、全脳アーキテクチャの技術開発の促進において多大な貢献がありました。