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2018年の幕開けにあたって

皆様、あけましておめでとうございます。

NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)より、新年のご挨拶を申し上げます。

私たちWBAIは脳全体のアーキテクチャに学んだ汎用人工知能(AGI)の2030年完成にむけて研究開発を促進しています。昨年も賛助会員顧問、サポーターズ、開発部、連携組織などを含む多くの皆様のご支援・ご協力を賜ることで活動を続けてまいりました。

AIの将来像としてAGIが広く知られるようになる中、昨年、私たちは進むべき基本理念を提示し、「Beneficial AGI」をテーマとしたシンポジウムなどを通じて、その理念を広めてきました。オープンな技術開発プラットフォームについて次の二つなどを進めました。一つはそのコアとなるBriCA言語 (図1参照)の利用を 昨年9月の海馬ハッカソン等で進めました。さらに大脳新皮質の局所回路を機械学習として実装するために必要な定式化の研究も進めました[1]。一方で、複数の学術プロジェクトなどとの連携を通じた、WBAの具体的な構築に関わる研究開発も広がりつつあり、例えばフレーム問題の部分的な解決を目指した等価性構造抽出技術等に成果が出はじめています[2]。また一般向けの国内雑誌Newtonの人工知能特集 (2018年1月号)の中で大きく紹介されました。

  

図1: WBAIポスター2017年版 (左: 日本語版、右: 英語版

AGIの開発競争が激化しつつある中、技術を民主化してゆくためにも、多くの技術者が開発に参加できる基盤を整えることは大切になります。現在私たちは、脳への理解を深めつつ、愉しく皆で協力しながら脳型AIの開発を進めるための具体的な地図となりうる「WBA技術開発ロードマップ」の再構築を開始しました。昨年末のキックオフミーティングでは、AGIに必要な能力群と脳器官との関係づけを開始しました (図2)。

図2: WBA技術開発ロードマップ・キックオフ合宿(2017年12月26日)にて
下段:大森隆司、山川宏、荒川直哉、高橋恒一、坂井尚行
上段写真:佐野仁美、大澤正彦、上野道彦

そこで今年は、WBAアプローチからのAGI構築にむけた協力の和を広めてゆくため、技術開発ロードマップとともに基本理念を世界に向けて発信してゆきたいと思います。その布石として昨年末にオーストラリアのProject AGIとパートナー関係を公式化しました。

今後とも人工知能技術は進展し続け徐々に実用化の範囲が広がり社会への影響が大きくなってゆくでしょう。こうした中、私たちWBAIは、NPOとして皆様とともに「人類と調和する人工知能のある世界」にむけて長期的な視点をもって歩んで行ければと考えております。本年もより一層、また多くの皆様からご支援ご愛顧のほどお願い申し上げます。

2018年元旦
特定非営利活動法人 全脳アーキテクチャ・イニシアティブ 一同

 


以下では、2017年のWBAIの主要な活動であったBeneficialなAGIの構築について補足説明いたします。

WBAIは昨年、適切に脳に学びながら汎用人工知能のオープンな研究開発を促進することで「人類と調和する人工知能のある世界」というビジョンを提案し、3月に基本理念として発表しました。こうしたアイディアを、「Beneficial AGI」をテーマとして行われた第2回全脳アーキテクチャシンポジウム[報告書1,2,3] (図3参照)のほか、代表による「ギャツビー/科研費合同ワークショップ:人工知能と神経科学」での発表、米国Future of Life Institute(FLI)から受けたインタビュー記事などを通じて広めました。こうした活動の結果として、WBAIは世界45のAGI開発組織の中で、安全性を配慮する非営利組織としてGlobal Catastrophic Risk Instituteのワーキングペーパーで紹介されています。これは特に東洋においては独自性の高い位置を占めていると言えます [3]。こうした動きの国内での連携として、昨年は「AI and Society」活動の応援も行いました。本年はさらに、人工知能学会全国大会中の「人とAIが織りなす新たなエコシステム」セッションに代表や副代表らが加わることなど、WBAIとしてAGI開発を、より人類に恩恵をもたらす方向に導けるよう努力してゆきたく思います。将来においてAGIが遍く人々に共有されて恩恵を与えるためには、多様な組織がAGI技術を開発しながら広める状況を造り出すことが肝要であり、WBAIはNPO法人としてその一翼を担いうると信じています。

図3:  第2回全脳アーキテクチャ・シンポジウムで用いたタイトル画像

参考文献:

  • [1] Hiroshi Yamakawa, Naoya Arakawa and Koichi Takahashi, “Reinterpreting The Cortical Circuit”, 1st. Int. Workshop on Architectures for Generality & Autonomy (AGA 2017),  19 August 2017.
  • [2] Seiya Satoh, Yoshinobu Takahashi and Hiroshi Yamakawa, “Validation of Equivalence Structure Incremental Search’’, Front. Robot. AI, 19 December 2017.
  • [3] Seth D. Baum, A Survey of Artificial General Intelligence Projects for Ethics, Risk, and Policy, Global Catastrophic Risk Institute Working Paper 17-1, 16 November 2017.

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