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Guillermo Barbadillo氏に Animal-AI Olympics (2019) におけるWBA賞を授与しました

現在の人工知能は、自然環境での生存に必要な汎用的な知性を備えていません。ですから動物のような知能を工学的に実現することは、より汎用人工知能の技術進展に役立つでしょう。

一方、わたしたち WBAIは2015年から Beneficialな脳型AGIの民主的な開発を先導・促進しています。そこで、2019年において、わたしたちは動物のもつ汎用性の高い知能を再現しようとするコンテスト「Animal-AI Olympics (AAO)」(Leverhulme Centre for the Future of Intelligence (CFI) 主催)を後援しました。

後援内容として以下を実施しました。

  1. 国内でのイベント促進のために、人型AIアシスタントを開発したAIベンチャーのクーガー株式会社と共催で2回のミートアップを実施しました(1回目記事2回目記事)。
  2. わたしたちが脳型AGIに着目していることから、生物学的妥当性が高い応募を称えるためのWBA賞を設けました。

WBA賞に関しては5チームの応募があり、審査の結果、2019年12月14日に開催された国際会議 NeurIPS の Competition Track Day 2 内で授賞の発表が行われました。受賞者は、機能的な汎用、生物学的妥当性、および計算論的な単純さの3つの側面を評価するGPS基準の総合評価において75点を獲得した Team IronBar(Guillermo Barbadillo氏)でした。

この作品は、基本的にオーガナイザーが提供したサンプルコードににおける強化学習モデル(Proximal Policy Optimization(PPO)モデル)に従っています。そして基本的なレベルではありますが、機能モジュールと脳領域は次のように対応付けされます。

 

視覚野

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)
基底核 PPOモデルでの Actor-Critic
前庭皮質 自己中心的速度入力
海馬台 訪れた場所の地図
運動野

PPOモデルでのアクター出力

この作品の特徴は、単純な空間記憶(Visited region map)がハードコーディングされ、学習の効果を十分に得るために異なる学習環境を多数生成し、それをトレーニングに利用しています。この作品は、すべてのエントリ中においても2位のパフォーマンスを達成しました。なお Barbadillo氏は、この空間記憶を嗅内皮質グリッド細胞の地図として説明していますが、その実装は海馬の場所細胞の地図に近いものでした。

なお、WBA賞の総合評価の平均スコアは100点中63点であり、2位は65点を獲得したTeam BLAI (Takashi Sano氏)の作品、3位は62ポイントを獲得したTeam Sirius(Dan Barry氏・総合3位)の作品でした。

WBA賞発表の様子は SlideLive(Slide 1136/1764)からみることができます。

今回の応募作品を見渡すと、強化学習に空間メモリを追加した上で大量の学習を行うアプローチが有効そうでした。これは、空間探索課題などの基本的な課題に対して、脳においても実現されているアーキテクチャの有効性を示唆しています。

他方で、いくつかのハンド・コーディングされた作品の中では、メタ認知を含む階層的な学習やオブジェクトの永続性などへの挑戦が見られました。これらの試みは、今後、知能のより高度な部分を実現するための方向性を示していると言えます。

一方で、わたしたちWBAIとしては、AGI開発を促進するための生物学的妥当性の評価において、いかなる部分について脳に似せて作ることに価値を与えるべきかという評価の難しさを再認識する機会となりました。今後は、知的システムの生物学的妥当性を評価するためのより洗練されたプロセスを確立してゆきたいと考えております。

以下、WBA賞についてのレビュープロセスについて説明します。

  1. WBA賞の応募者は、ソースコードと提出作品の生物学的妥当性をアピールするための追加文書を提出する必要がありました。
  2. コードレビューで、ドキュメントとソースコードの間に矛盾がないことを確認しました。
  3. 以下のメンバからなるWBA賞のための審査委員会が、GPS基準に基づいて審査をおこないました。ここで機能的な汎用性は、他のすべての参加者と同じ10のカテゴリにおける達成スコアを用いて評価されました。提出された文書によって生物学的妥当性が評価されました。シンプルさはソースコードによって評価されました。
    • Peter Dyan
    • 銅谷賢治(Kenji Doya)
    • 荒井幸代(Sachiyo Arai)
    • 山川宏(Hiroshi Yamakawa)

なお、2019年のAnimal-AI Olymipics 全体の結果は The Animal-AI Olympics 2019 でみることができます。総合優勝としては、チームTrrrrr(Denys Makoviichuk氏)が総合優勝であり、前出のTeam IronBar(Guillermo Barbadillo氏)が2位、Team Sirius(Dan Barry氏)が3位でした。Animal-AI Olympicsのオーガナイザらによるイベントの説明を含む発表の全体は、こちらのSlideLive(Slide 822/1764)からみることができます。また、The Animal-AI Testbed ではブラウザ上で受賞者の作品が課題を解く様子をみることができます。

以上です

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