第37回 全脳アーキテクチャ勉強会〜大脳皮質の回路とその役割の謎に迫る〜

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概要

大脳皮質はヒトの知能に関与する最も重要な脳の器官である。近年の深層学習の進展で、画像・音声・テキスト処理など、脳でしか行えないと思われていた情報処理の工学的実現はかなり進んだ。しかし一方で、現状の人工知能技術とヒトの知能には大きな違いがあるようにも見える。大脳皮質に関する理解が進めば、ヒトのような汎用人工知能の実現に役立つ手掛かりが得られるだろう。そこで本勉強会では、大脳皮質に関する基礎知識やいくつかの新しい知見を踏まえたうえで、今後何を解明していくべきか、人工知能に何が応用できるか、などを議論したい。

開催概要

講演スケジュール

時間 内容 講演者
17:55 開場 司会:一杉裕志 (産業技術総合研究所)
18:00 開会の挨拶 山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)
18:05 趣旨説明(資料 一杉裕志 (産業技術総合研究所)
18:10 講演1(資料 一杉裕志 (産業技術総合研究所)
18:55 講演2(資料 田和辻可昌(早稲田)
19:15 休憩(10分)
19:25 講演3 島崎秀昭(京都大学)
19:10 パネル・ディスカッション 山川宏(モデレーター)、島崎秀昭、一杉裕志、田和辻可昌
20:40 Closing Remark 森岡 大成(実行委員長)
20:45 終了
大脳皮質って何?大脳皮質についての基礎知識

講演者:一杉裕志 (産業技術総合研究所)

概要:大脳皮質は脳の中で知能をつかさどるもっとも重要な部分であり、その情報処理原理の解明が強く望まれている。本講演では大脳皮質の解剖学的特徴と古典的な計算論的モデルに関する基礎知識を説明する。大脳皮質には、コラム構造・6層構造、双方向に結合する領野間のネットワークといった解剖学的特徴がある。大脳皮質は50ほどの領野に区分されている。それぞれの領野は異なる情報処理を受け持っている。しかしどの領野も解剖学的構造は似ており、同じ原理で動いていると思われる。その情報処理に関する古典的な計算論的モデルとして、競合学習を用いたモデル、スパース符号化、ベイジアンネットを用いたモデルなどがある。 参考:「大脳皮質とベイジアンネット」https://www.airc.aist.go.jp/seminar_detail/docs/seminar01-ichisugi.pdf

大脳皮質の解剖学的構造と計算論的モデルの調査

講演者:田和辻可昌(早稲田)

概要:WBA(Whole Brain Architecture)開発における主要な方法論としてSCID(Structure-constrained Interface Decomposition)法がある。この方法論では,均一サーキット(Uniform Circuit)と呼ばれる計算論的にユニークなまとまりを与える神経細胞集団と,それらの接続によって脳をメゾスコピックレベルで捉える。この観点から大脳新皮質の計算モデルを構築するにあたり,詳細かつ網羅的な新皮質間,より詳細には領野間のラミナ投射パターンの抽出をこれまで試みてきた。本講演では,我々が先行研究に基づき選定したした標準ラミナ構造(Standard Laminar Organization of Isocortex)および,抽出された標準ラミナ投射パターン(Standard Inter-area Laminar Pattern of Projections: SILPP)について述べ,このSILPPに基づいた計算モデルの位置づけについて概説する。

大脳皮質局所回路の結合推定と符号化方式

講演者:島崎秀昭(京都大学)

概要:生体内の神経活動から回路構造を同定し,回路が実現する符号化方式を明らかにすることは神経科学における基本テーマのひとつである。従来,回路構造は2細胞間の相関解析を網羅的に行い推定されてきたが,この手法は観測された細胞間の結合を明らかにする手法である.観測下の神経細胞は観測外の神経細胞からの共通入力によって相関を伴う様々な活動を示しうる。そこで本講演では,神経活動の高次を含む相関構造から隠れた共通入力の結合構造とそのタイプ(興奮/抑制)を推定する新しい手法を紹介する。この手法を用いた皮質局所回路の結合推定の結果を紹介し,皮質回路の符号化方式に関する考察を行う。

運営スタッフ

  • プログラム委員長:一杉裕志
  • 実行委員長:森岡大成
  • 司会:一杉裕志
  • Zoomホスト:孫 暁白
  • Zoom共同ホスト:生島 高裕、森岡、浅川、荒川、西村
  • connpass:西村由弥子
  • 広報/WBAI事務局:荒川 直哉
  • QAチャネル招待担当:西村由弥子