全脳アーキテクチャ中心仮説

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全脳アーキテクチャ中心仮説

<WRAP center round tip 90%> <poem> 【全脳アーキテクチャ中心仮説】

”脳はそれぞれよく定義された機能を持つ機械学習器が一定のやり方で組み合わされることで機能を実現しており、それを真似て人工的に構成された機械学習器を組み合わせることで人間並みかそれ以上の能力を持つ汎用の知能機械を構築可能である” </poem> </WRAP>

全脳アーキテクチャ中心仮説は、全脳アーキテクチャ・アプローチにおけるミッション・ステートメントを実現するために設定された仮説です。全脳アーキテクチャ・プロジェクト(WBAP)初期(2014年6月頃)において高橋恒一氏による原案をベースとして議論が行われ、現在(2015年10月時点)では上記の形になっています。WBAPにおける作業仮説として概ね合意を得られていますが、脳をモジュールに分解可能であるかなどについての議論は残っています。

この仮説により、全脳アーキテクチャ・アプローチにおける研究開発は大きくは、(1)脳器官モジュールの研究開発と、(2)脳全体統合機能の研究開発の二つに分解されます。

(1)脳器官モジュールの研究開発

脳器官モジュールの研究開発においては、脳器官(新皮質の領野、基底核、海馬、扁桃核等)、もしくはそれらを細分化した各部分を機械学習モジュールとして開発する。

(2)脳型認知アーキテクチャの研究開発

脳型認知アーキテクチャの研究開発は、脳器官モジュールを統合することで脳全体の構造に学んだ認知アーキテクチャを構築する研究開発である。このための支援環境を構築するために脳全体統合環境の開発が必要とされる。

上記の分解を端的に述べると以下となる。

<WRAP center round important 80%> 全脳アーキテクチャ = (1)複合機械学習 + (2)脳型の認知アーキテクチャ </WRAP>

分解されたそれぞれについて,実現性を高める要因があらわれてきたことがWBAアプローチ全体の実現性を高めています。

(1)複合機械学習については深層学習技術の進展により、これまで難しかった大脳新皮質を機械学習器としてモデル化することに一定の目処が立ちつつあることがWBAアプローチを後押ししています。特に脳における大脳新皮質の役割として、汎用的なメカニズムを用いつつ、経験に基づいて多様な知的機能を獲得する部分に相当しており、汎用人工知能の実現において根幹的な役割を担っています。さらに深層学習は、人工知能にとっての往年の課題である表現獲得機能において突破口を得ている点も重要です。

(2)脳型の認知アーキテクチャについては、近年の欧米等の脳科学大量投資で脳全体の結合様式(コネクトーム)がみえつつあることから、メゾスコピックレベルのコネクトーム情報を認知アーキテクチャの基礎情報として利用できる可能性が高まっています。1)


1)
未だ不十分な情報もある。例えば大脳新皮質に関しては、局所的な6層構造のどの層への入出力であるかを特定できることが機械学習装置を接続する際に重要な情報になる。
  • 全脳アーキテクチャ中心仮説.1444154308.txt.gz
  • 最終更新: 2015/10/07 02:58
  • by t.sato