第10回全脳アーキテクチャ・シンポジウム(2025年9月4日開催)

WBAIからのお知らせ

Vimeo YouTubeにて動画を配信予定 

テーマ「 AGI・脳・社会:ヒト脳型 AGI はヒトとAI社会の“信頼”の架け橋になるか?」


急速に発展する AGI と大規模言語モデルが私たちの日常に溶け込みつつある今、「AI をどこまで信頼できるのか」という問いは一層切実になっています。設立 10 周年を迎えた全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)は、脳科学に根ざしたヒト脳型 AGI を「ヒトと AI 社会のあいだに立つ〈介在者〉」と位置づけ、説明できる・安全に使える AI を社会へ届ける道筋を探ります。シンポジウム当日は、松尾豊氏の特別講演に続き、基調講演でヒト脳型 AGI が〈介在者〉として果たす役割を俯瞰します。BRA 駆動開発セッションでは解釈性と安全性を高める具体的なツールや設計手法を紹介し、10 周年記念表彰で技術発展とコミュニティへの貢献を称えます。締めくくりのパネル討論では、技術・倫理・政策の第一人者が「信頼される AI 社会」へのロードマップを議論し、ヒト脳型 AGI がヒトと AI 社会を結ぶ架け橋となる可能性を探ります。研究者・技術者はもちろん、企業・政策担当者、学生、そして未来の AI 社会に関心を寄せるすべての方々と、ヒト脳型 AGI がもたらす信頼の可能性を共有できれば幸いです。


シンポジウム開催詳細


講演スケジュール

時間内容講演者
13:10開場 
13:20ご案内(資料)浅川伸一(東京女子大学)
13:23開会のあいさつ尾藤 晴彦(東京大学)
第1部全脳アーキテクチャの現在 
13:28基調講演 「WBAI 10年の歩み ー 脳型AGIの設計から実装へ ー」山川 宏(WBAI)
13:58BRA駆動開発①:
脳全体の解剖学的接続のデータベース化とその評価
芦原祐太(日本大学)
14:05BRA駆動開発②:
ヒト新皮質のメゾスコピックな接続構造のデータ化
鈴木雄大(東京大学)
14:12BRA駆動開発③:
CILs:大脳新皮質を中心とした標準ループ回路のBRAデータ化
田和辻 可昌(東京大学)
14:20BRA駆動開発④:
海馬体を参照した空間認知モデル
中島 毅士(立命館大学)
第2部表彰式 
14:2710周年記念表彰式
14:42休憩交流
第3部
14:57特別講演
「全脳アーキテクチャからの社会への貢献」
松尾 豊(東京大学)
15:12招待講演
「人同士の共生から生み出す、人と共生するAI」
大澤 正彦(日本大学)
15:32パネル討論モデレータ: 栗原 聡(慶應義塾大学)
パネリスト:相澤彰子(国立情報学研究所)、高橋恒一、濱田太陽(株式会社アラヤ)、山川宏(WBAI)
17:02閉会の挨拶高橋恒一(理化学研究所)

※講演者紹介文へのリンクおよび講演スライドへのリンクは以下をご覧ください


第1部: 全脳アーキテクチャの現在

基調講演「WBAI 10年の歩み ー 脳型AGIの設計から実装へ ー」[スライド]

講演者:山川 宏(全脳アーキテクチャ・イニシアティブ)

概要:全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)が10年間で確立した脳型AGI開発手法は、人間の脳構造を参照したBRA駆動開発手法により、内部動作が解釈可能で信頼性の高いAGIを実現する。これは従来のブラックボックス化しがちなAIの限界を突破する重要なアプローチ。こうした特徴を持つ脳型AGIは、人類と超知能の仲介という非脳型AIでは代替不可能な独自価値を創出できる。急速に進展するAGI開発状況において、2027年までに、その設計図(WBRA)完成は人類にとって重要な意味を持つ。この目標達成に向けて、大規模言語モデルを戦略的に活用して開発を大幅加速させている。さらに、ソフトウエアの実装と評価のシステム(BITS)を提示することで、ヒト脳型AGIが効率的に開発できる環境の準備を整えている。

BRA駆動開発①:脳全体の解剖学的接続のデータベース化とその評価[スライド]

講演者:芦原祐太(日本大学)

概要:BRA駆動開発では、脳の解剖学的知見であるBrain Information Flow(BIF) の活用が解剖学的整合性を保つ上で重要である。本発表では、BIFを数多の神経科学文献から自動的に抽出する試み、およびそのデータを格納するデータベースであるWholeBIF-RDBについて紹介する。

BRA駆動開発②:ヒト新皮質のメゾスコピックな接続構造のデータ化[スライド]

講演者:鈴木雄大(東京大学)

概要:脳型AGIの実現には、人間の新皮質の接続構造を計算モデルとして再現することが不可欠である。本研究では、新皮質のメゾスコピックな接続構造を、ミクロとマクロの2つのスケールに分けて体系的に整理した。ミクロな接続構造として、領野間のラミナ(層)投射パターンをSILPPという形式で整理し、マクロな接続構造として、領野間のコネクトームと階層構造をSHCOMという形式で整理した。BRA駆動開発手法により、これらの異なるスケールの接続構造を統合的にモデル化することで、新皮質の複雑な神経回路を計算可能な形で表現することが可能となった。さらに、SHCOMデータをBRAESプラットフォーム上で公開することで、研究者や開発者が脳型AGIの計算モデルを構築するための基盤を提供する。本成果は、神経科学的知見に基づいた汎用人工知能の実現に向けた重要な一歩である。

SHCOM BRAデータ:YS25SHCOMv0.bra

BRA駆動開発③:CILs:大脳新皮質を中心とした標準ループ回路のBRAデータ化[スライド]

講演者:田和辻可昌(東京大学)

概要:脳内には、大脳新皮質を中心とした様々なループ回路があり、それぞれ認知・情動・運動などの複雑な認知情報処理を実現している。一方、大脳新皮質が実現する個別の機能の根底には共通の計算メカニズムが存在するという「大脳新皮質の計算機能の均一性」仮説がある。この仮説に基づき、我々は様々なのループ回路を個別にモデル化するのではなく、共通の「標準回路」ーCanonical Isocortical Loops(CILs)ーとしてモデル化することを試みている。CILsの重要な貢献は、神経科学的に未解明な皮質領域にも対応でき、また個々の複雑なループ回路を考慮する手間が省けるため、大脳新皮質を中心とした脳ソフトウェアを効率的に実現できる。本講演では、CILsについての我々の取り組みについて紹介する。

CILs BRAデータ:YT25CanonicalIsocorticalLoops.bra

BRA駆動開発④:海馬体を参照した空間認知モデル[スライド]

講演者:中島 毅士(立命館大学)

概要:海馬体は哺乳類の大脳辺縁系に位置する脳部位で、空間認知やエピソード記憶を担い複雑なナビゲーションを可能にしている。海馬体の構造を参照した空間認知の計算モデルを確率的生成モデル用いて構築した。本講演では、シミュレーション環境におけるこの空間認知モデルの自己位置推定や異常検知性能におけるモデルの挙動について講演する。

第2部: 授賞式

WBAI奨励賞2025

受賞者:当日発表

授賞理由:当日発表

WBAI功労賞2025

受賞者:当日発表

授賞理由:当日発表

第3部:

特別講演「全脳アーキテクチャからの社会への貢献」[スライド]

講演者:松尾 豊(東京大学)

概要:TBD

招待講演「人同士の共生から生み出す、人と共生するAI」[スライド]

講演者:大澤 正彦(日本大学)

概要:講演者は幼少の頃から「ドラえもんをつくる」という夢を抱き、その実現に向けて多様な活動に取り組んできた。誰もが大好きなドラえもんだからこそ、「みんなでつくる」ことを大切に考え、人と人との協力関係から生まれるAGIの構想を描いてきた。2014年には全脳アーキテクチャ勉強会をきっかけに「全脳アーキテクチャ若手の会」を設立し、その後WBAIと連携しながら多様な取り組みを展開してきた。 本講演では、人とAIとの共生、そして人と人との共生の双方に取り組んできた講演者の活動や研究、さらに今後の展望について紹介する。

パネル討論

AGI・脳・社会 ─ ヒト脳型 AGI は“信頼のプロトコル”になり得るか?[スライド]

モデレータ
栗原 聡 (慶應義塾大学) 

パネリスト
相澤彰子(国立情報学研究所)
高橋恒一(理化学研究所)
濱田太陽(株式会社アラヤ)
山川宏(WBAI)


運営スタッフ


  • プログラム委員長: 山川宏(WBAI)
  • 実行委員長:太田博三
  • 司会:浅川伸一(東京女子大学)
  • 司会スライド/タイムテーブル: 浅川伸一、山川 宏
  • 広報:荒川直哉(WBAI)
  • Connpass:太田博三、西村由弥子
  • Zoomホスト:片山立
  • Zoom共同ホスト:荒川直哉、太田博三、西村由弥子
  • グラフィックデザイン:藤井烈尚