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第13回全脳アーキテクチャ勉強会〜コネクトームと人工知能〜

全脳アーキテクチャ・アプローチによる汎用人工知能の構築においては,脳における多様な学習能力に対する理解にもとづいて,機械学習を結合して認知アーキテクチャとして実装してゆきます.このアプローチの実現性は,機械学習においては深層学習技術の進展,認知アーキテクチャの面において神経科学知見の蓄積に支えられています.

今回は特に,後者にあたる,脳内の神経ネットワークに対応するコネクトーム研究にフォーカスします.この分野では,時間的に比較的安定した構造的な神経ネットワークだけでなく,その上で認知状態に応じてダイナミックに躍動する神経活動の姿が見え始めています.こうした知見の蓄積から,脳がいかにして知能に汎用性を実現しているヒントも得られると期待できます.

そこで今回は「神経科学はAIのために何を知り得るのか」という点に力点をおきながら,最初にハーバード大学の水谷治央氏には「コネクトームの活用とその近未来」というタイトルで,次に東京大学の倉重宏樹氏には「脳全体の機能に迫る」 というタイトルでご講演を頂きます.そして引き続き,電通大の栗原聡氏を交えてパネル討論を行います.

勉強会開催詳細

  • 日 時:2016年3月15日(火) 18:00~21:00 (17:30開場)
  • 場 所:グラントウキョウサウスタワー41Fアカデミーホール 東京都千代田区丸の内1-9-2http://www.recruit.jp/company/about/office.html (株式会社リクルートテクノロジーズ様のご厚意による会場ご提供)
  • 定 員:170名(定員に達し次第締め切らせて頂きます)
  • 参加費:無料
  • 申込方法:本イベントに参加登録のうえ,当日会場受付にてお名前・ご所属等の記入をお願い致します。
  • 主 催:NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ
  • 主 催:産業技術総合研究所
  • 協 賛:株式会社リクルートテクノロジーズ
  • 後 援:株式会社ドワンゴ

講演スケジュール

司会進行:坂井美帆

18:00 – 18:05「挨拶」(産業技術総合研究所 人工知能研究センター脳型人工知能研究チーム 一杉裕志氏)

全脳アーキテクチャ勉強会オーガナイザーの1人である一杉氏からの挨拶になります。

18:05 – 18:20「オープニング」(ドワンゴ人工知能研究所 山川宏氏)

18:20 – 19:15「コネクトームの活用とその近未来」水谷 治央 (ハーバード大)

人工知能はヒトと同等またはそれ以上の知性を獲得することができるのでしょうか?人間の知性を超える機械学習アルゴリズムを開発するためには、脳内で行われている実際の情報処理機構を徹底的に解明する必要があると、私は考えています。少なくとも、ヒトが内包している創造力や柔軟性が、どのような情報処理により実現しているのかを知ることは、今後の人工知能を開発する上でターニングポイントになってくるのではないでしょうか。人工知能の応用先として車の自動運転技術が話題になっていますが、天候や周囲の環境により運転の難易度は大きく異なり、ヒトの認知能力以上の運転性能を人工的に開発することは容易なことではありません。そのような複雑な状況困難性を克服する一つの手段として、コネクトームを利用した人工知能開発の可能性を提案したいと思います。本講演では、私達の研究室で開発された、シナプス構造まで解像できる電子顕微鏡による神経ネットワーク再構成手法を紹介した後、現在、アメリカで進んでいるMachine Intelligence from Cortical Networks (MICrONS)と呼ばれるプロジェクトの概要に言及したいと思います。

19:15 – 19:30 休憩

19:35 – 19:40 WBAI創設賛助会員のプレゼンテーション

今回は株式会社Nextremer様からのプレゼンテーションとなります。
テーマ : 外部記憶を持つニューラルネットワーク
発表者 : 株式会社Nextremer 古川朋裕

19:40 – 20:05 「脳全体の機能に迫る」 倉重宏樹 (東京大)

本講演では,脳が行っている様々な認知機能およびそれら認知機能の間の関係性を脳のコネクティビティという観点から理解し,脳型人工知能の開発へとつなげうる知見を紹介したい.そこでまず,脳の各部位のネットワークアーキテクチャ的な位置づけとその部位が担う認知機能との関連を,脳機能画像データベースとresting-state fMRIを用いたコネクティビティ解析を併用することで明らかにする試みを紹介する.これにより,計算機上でヒトが行っている認知機能を実現しようとしたときに,どのようなモデリングが必要であるかを示したい.また,しかしながら,人工知能に何らかの認知機能を実装させようと考えたとき,その認知機能の概念自体がよく定義されておらず,何を実現すればその認知機能を実装したことになるのかが不明である,という状況はありえることである.したがって,脳に倣った人工知能を開発しようとしたとき,脳のハードウェア面のみならず,脳が行っている“機能”というソフトウェア面の理解を深めることも重要である.そこで,本講演では脳のコネクティビティを手がかりに,各認知機能の概念的分析や認知機能同士の関係性の把握,認知的情報処理の粗視化・微視化といった,認知機能の理解を深めるための方法論も示したい.

20:05 – 20:35頃 パネルディスカッション「コネクトームはなぜ知能を創発できるのか?」

パネリスト:水谷治央、倉重宏樹、栗原聡(電通大)
脳は2000億にもおよぶ神経細胞をノードとする大規模動的複雑ネットワークであり、個々の神経細胞の挙動は極めて単純かつ局所的であるにもかかわらず、全体として知能や意識・感情といった複雑な現象を創発させることができる不思議なシステムです。
この不思議を創発させる鍵の一つがコネクトームを構成する「スモールワールド」と呼ばれる複雑ネットワーク構造だと思われます。そしてもう一つの鍵が生命システムとしての独特な階層構造を創発させるメカニズムであると考えています。
パネルではこの2つの鍵を中心にパネラーの先生方といろいろ議論したいと思います。

21:00 – 23:00 懇親会(自由参加)

会場近辺のお店で、有志による懇親会を行います。

本勉強会の報告書はこちらでご覧頂けます

詳しくは、第13回全脳アーキテクチャ勉強会 「脳の学習アーキテクチャ」報告レポートをご覧下さい。

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